Soccer Life   STAGE--42

二人のマークを綺麗にかわして決めた、凄いとしか言いようがないゴール。
もちろん、ゴールを決めたと言う点と他の者の目を惹いたと言う面では暁斗も同等かもしれない。
暁斗は成長した成樹を直に目にして、口の端をあげる。

「さすが…。センスは言うまでもなく、技術まで格段に上がってるな」

部活の時も感じないわけではなかった。
関西選抜に参加するようになって、成樹の動きに磨きがかかったのを、暁斗が気づかないはずもない。
誰よりも、同じ時間を共にして同じように高みを目指した暁斗。
暁斗にとって成樹はライバルであり、よきパートナーだった。
そしてそれは成樹にとっても同じ事。
お互いの成長を自分の目で確かめて、二人は視線を交える。






将の横を通る時に何かを告げた成樹。
その様子を暁斗も見ていた。

「おー、目を輝かせちゃって。カザのああ言うとこは、結構好きなんだよなぁ」

楽しげにそう言うと、暁斗は近づいてくる金髪に目を細めた。
数歩離れて目の前に立ち止まる。

「上手くなってんじゃん」
「暁斗もな」
「でも……俺がDFなら止めてた」

笑いを交えてそう言うと、成樹も顔に笑みを浮かべる。

「暁斗のを止めれる自信はあらへんわ」
「攻めの男だからな、成樹は」
「オールラウンダーも便利やけどなぁ」
「成樹には前が似合ってるよ」

数ヶ月前には成樹がGKを務めた事もあったなぁと思い出す。
一番後ろを守ると言うのはさぞかし彼の性に合わなかっただろう。
今の姿が生き生きしている。

「ああ、カザがやるみたいだな」
「相変わらずの負けず嫌いっちゅーか何ちゅーか…」
「……相手、かなりの大型ボランチだな。あの顔は……」

暁斗は集めた情報に目を通す。
パラパラとページを捲っていくが、ふとそのノートを閉じてしまう。
それから、隣で僅かに首を伸ばしている男をじろりと睨みつけた。

「…………覗くなって」
「別にええやん」
「これはスタッフの特権」

そう言って彼の頭を押しのける。
不平を漏らす成樹だが、暁斗も一応コーチ補佐だ。
一人を贔屓するわけには行かなかった。

「諦めろって。コレが俺の仕事だからな」
「しゃーないなぁ…。ほな、また後でな」

手を振りながら離れていく成樹に同じようにヒラヒラと手を振る。
暁斗の周りから人が離れると、再び選手表に目を通した。

「須釜寿樹……身長は…190?うわー…この歳で…」

一通り目を通すと、練習の方に視線を戻す。
丁度、将のボールがカットされた所だった。

「フェイントを一目で見抜いたのか…それとも知り合いか」

東京選抜の練習中に何度か見た将の消えるフェイント。
死角を利用したそれは暁斗も認める彼だからこそ出来る技だ。
もっとも、暁斗相手の場合は成功の回数よりも抜かれた回数の方が断然少ないが。

「ああ、知り合いみたいだな」

将と話を交わす風景を見て、暁斗はそう判断した。
一目で見抜かれたわけではない事に安堵の溜め息を漏らす。
だが、次の瞬間にはその表情を厳しくした。

「…一目で見抜かれたんじゃないなら、性質が悪いな…。知られてるのか…」

対策が必要かな?などと考えつつ、暁斗はその場から立ち去った。














「0対0で前半終了ですか」

得点ボードに視線をやりつつ、暁斗はそう呟いた。
傍には東京選抜監督である玲と、選抜選手達。

「暁斗!どこ行ってたんだよ!?」
「ああ、東海と東北の情報収集にな」
「へぇ…何か目ぼしい弱点とかあった?」
「んーそれは皆がいる時にな、英士」
「別に今でもいいだろ」
「あのなー……ん?ああ、そっか。お前ら三人スタメンじゃなかったんだな」

暁斗の姿を発見して近づいてきた結人、英士、一馬の三人。
三人と軽く会話すると、暁斗は玲の方へと歩いた。

「んで、状況はどうなんです?」
「流れは向こうね。でも……そろそろ焦り始めてるんじゃないかしら?」
「誰か気づきました?向こうの弱点」
「風祭くんがね。あなたと同じ所に気づいたわ」

それを聞くと、暁斗は嬉しそうだった。
作戦を確認しているのか、メンバーが輪になって何やら話しこんでいる。

「んじゃ、後半は攻めていくんですね」
「もちろんよ」
「しかし……ゾーンディフェンスをここまで使えるとは……須釜って人中々ですね」
「そうね。先の楽しみな子だわ」

そうしている間に、コート内に選手が戻り始めていた。
後半開始のホイッスルが鳴り響く。






「それはそうと…東北と東海の方はどうだった?」
「どうもこうも…危ういですよ、東海」
「え…?」

暁斗の言葉に、玲も驚愕の表情を見せる。

「まだどうなるか、はっきりとはわかりませんけど……」
「ルイスコーチは向こうにいてくれてるのね?」
「はい。俺はこっちを見ててやれって言われたんで戻ったんですけど…。
戻ってみればこっちもかなり接戦してるし…今回のトレセンはレベルが高そうですね」

そう言いながらも、暁斗は嬉しそうだった。


負ければ終わり。


そう言う場に立ちながら、強敵を前にして暁斗は笑みを絶やしていない。
そんな暁斗を見て、玲は苦笑いを零した。

「(本当に好きなのね…。自分もフィールドに立ちたいでしょうけど…。)」

自分が出来ない分を、他のメンバーに託していた。
それを知らない東京選抜メンバーだが、一心にボールを追う。
ただ、勝利をその手に掴むために。

Rewrite 07.08.05