幼い記憶 04
「ごめん!!」
エドたちと合流したコウだったが、すぐさま頭を下げる羽目になってしまった。
久しぶりに出会った師匠と話しこんだ。
結果、コウがエドたちと合流したのは別れてから三時間も経ってからだった。
「…とにかく、この話は教主に会ってからだ」
「教主…?あぁ、さっき広場で何かしてたけど…アレと関係があるの?」
コウがエドに尋ねると、エドは不敵に微笑んだ。
その笑みで、勘のいいコウは大体の内容を把握したのだった。
「信じられない…偽聖者も甚だしいね」
コウが呆れた声で言い捨てた。
教主の所を尋ねて、三人は手厚い歓迎を受けた。
「まさか、挨拶に鉛弾を食らうとはね」
「本当だな。
ったく…アルが撃たれそうだからって生身のお前が飛び出してどうすんだ…」
「全くだよ…僕はこんな体だけど、コウは生身なんだよ?
その辺はちゃんと理解しておいてくれないと…」
「えー?私はこの通り、ピンピンしてるけど?」
コウはにっこりと微笑んだ。
挨拶代わりに銃口を向けられたアル。
同時にコウがアルの前に飛び出してアルを庇ったのだった。
飛び出す時には、すでに銀の剣を錬成し終えていて、コウはそれでいとも簡単に銃弾を弾いたが。
「さて…。へっ「いらっしゃい」だとさ」
あるドアの前に来ると、そのドアは自然に開いた。
まるで三人を招き入れるかのように。
中に入ると、再びドアは閉ざされる。
「神聖なる我が教会へようこそ。教義を受けに来たのかね?ん?」
教主とあがめられている男が、微笑みを浮かべたまま前方の階段から現れた。
エドが教主と話している間、コウは一言も口をはさまなかった。
そして、教主が自らの野望を一通りしゃべり終えたところで、アルが鎧の中からロゼを出した。
「たしかに信者は俺の言葉にゃ耳もかさないだろう。けど!
彼女の言葉にはどうだろうね」
エドが鎧の中のロゼを親指でさして、ニヤッと笑いながら言った。
ロゼは困惑の表情を浮かべている。
教主は尚もロゼを自分の側に戻そうとした。
「恋人を甦らせることができるのは自分だけだ」と言って。
コウは黙っていたが、ぎゅっと拳を握り締めていた。
「三人とも、ごめんなさい。
それでも私にはこれしか…これにすがるしかないのよ」
ロゼが、エドから離れていった。
「死んだ人間は、どうやっても戻っては来ないのよ」
低い声が、部屋の中に響いた。
小さい声だったにも拘らず、それは凛としてこの場にいた全員の耳に届く。
「戻ってこないから、“死”という言葉があるの。
生きている人間が出来る事は、死んだ人を生き返らせることじゃない。
その人を忘れない事…そして、その人の意思を継ぐことだけよっ!!
どれだけ嘆いたって、現実は何も変わってはくれないし、時間だって待ってはくれない!!」
コウが、叫んだ。
その言葉に、エドが表情をゆがめた。
彼女の過去を知っているから。
「あなたに何がわかるの!?」
「わからないわ。私にあなたの気持ちなんて。
私の気持ちがあなたにはわからないように」
「――――――っ!!!」
険しい表情のまま、コウは教主を睨みつける。
決して涙を流すことのないコウ。
流さないからこそ、彼女の強い想いがその態度に表れていた。
「――――…っ。…異教徒の始末はこいつらに任せるとしよう」
一瞬は怯んだ教主だったが、すぐに後ろのレバーの存在を思い出して、それを引いた。
暗闇から現れてきたのは、どの動物とも分類できない生き物。
――合成獣――
二匹が三人を挟むように、徐々に近づいてくる。
「こりゃ丸腰でじゃれあうにはちとキツそうだな、と」
エドがそう言うと、両手を合わせて地面に着いた。
地面から槍を錬成する。
コウも、同様に両手を合わせると腕輪と首のチョーカーから細い剣を錬成した。
エド合成獣の片方に向かって行ったのを見て、コウももう片方に向き直る。
合成獣の爪がエドの槍と左足を引き裂くと、教主が嬉しそうな声を上げた。
「中々いい爪だけど…意味はないね」
コウが相手をしていた合成獣が、コウの剣を引き裂こうとした。
が、それは剣を引き裂くことなく刃の部分で止まる。
と、同時にエドを引き裂いた合成獣の爪が折れる。
「!!?」
「「あいにくと特別製でね」」
コウとエドの言葉が被る。
二人は一瞬顔を見合わせると、ふっと微笑んだ。
「私はアンタなんかとはここの出来が違うの。
ただの剣を錬成したわけじゃないわ」
コウは人差し指で自分の頭を軽く叩く。
そして、持っていた剣で合成獣の両手足を一度ずつ刺した。
立つ事の出来なくなった合成獣は、酷い叫び声をあげて地面に倒れる。
「君に罪はない…。少しだけ動けなくはさせてもらったよ」
合成獣の傍にしゃがみ込むと、コウは小さく呟いた。
コウの決着がついた頃、エドの方も戦闘が終わろうとしていた。
エドがズタズタになった右腕の服を取り払う。
下から出てきたのは、銀色に鈍く光る鋼だった。
「ロゼ、よく見ておけ。
これが人体錬成を…神様とやらの領域を侵した咎人の姿だ!!」
「………鋼の義肢“機械鎧”…。ああ、そうか…鋼の錬金術師!!」
「降りて来いよ、ド三流。格の違いってやつを見せてやる!!」