幼い記憶 02
「…コウ!?」
「あ…マスタング中佐」
エドワードたちと共に中央へ付いてきていたコウ。
そこで、ロイと出会った。
ロイの方はと言うと…素晴らしいほどの笑みを浮かべてコウに近づいてきていた。
「…何のつもりかね?エドワード・エルリック?」
「うるせー…。妙に安っぽい笑顔でコウに近づくんじゃねぇっ!!」
「安っぽ…っ!?」
「くすくす…お久しぶりです、中佐」
「あぁ…久しぶりだね。君と離れている間に大佐になったのだよ」
「わぁ、それはおめでとうございます!」
「俺を無視して話を進めるな!!!」
暴れだしそうなエドを宥めるコウ。
さすが、幼馴染と言うことだけあって、エドの扱いは朝飯前だ。
「ほらほら、エドは今から試験なんだからね?集中集中!」
コウはグイグイとエドを押しながら建物の中へと入っていく。
待合室のような部屋へ案内されると、「探検してくる!」といってコウはエドが止める間もなく廊下を走り去った。
「相変わらず…広いねぇ…」
「…コウくんではないか!」
「その声は…大総統!?」
廊下を歩いていると、コウは大総統に呼び止められた。
嬉しそうに駆け寄っていくコウ。
「こんにちは!」
「あぁ、君も元気そうだね。今日はどうしたんだい?」
「幼馴染の…エドワード・エルリックって言うんですけど。それの付き添いです」
「あの子のか!そうか…君も彼の試験を見るかい?」
「いいんですか!?」
「もちろんだ。私が特別に許可しよう」
「ありがとうございます~vvv」
コウは子供のようにはしゃぐと、そのまま大総統と話しをしながら試験会場へと歩いていってしまった。
「ったく…コウの奴はどこまで行きやがったんだぁ?」
時間になってしまったので、仕方なくコウを放って会場へと案内されているエド。
コウがそこにいるとは思いもしない。
「はぁい♪エドv」
「・・・・・・・・・コウ?って!お前何してんだぁ!?」
「大総統に誘ってもらったのvエドの錬成をしーっかり見させてもらうからねv」
「・・・・・・・・・」
例え幼馴染と言えど、エドにはコウの行動が読めなかった。
大総統と仲良く話す姿は、まるで祖父と孫のようだ。
いつまでも呆れているわけにも行かず、エドは錬成を始めた。
パンッと手を合わせ、両手を床についた。
すぐさま電流のような錬成反応が起こり、床から抜けるように長い槍がエドの手に納まった。
皆が錬成陣なしの錬成に驚いている最中、エドはその槍を大総統に向けて突き出した。
「・・・・・・・・・エド…悪戯が過ぎるでしょ?」
エドの槍は、大総統の横に立っていたコウによって止められた。
コウの手には、錬成された銀の剣がある。
コウは槍と大総統の間に滑り込み、右手の剣は真っ直ぐエドの咽に当てた。
むろん、エドの頭には無数の銃が突きつけられている。
「本気じゃねぇよ」
「…そう言う問題じゃないでしょ」
「ふむ…肝が座っておる。ところで、この手は何なのかね、コウくん?」
大総統はコウの左手に視線を落として言った。
エドも同じように視線を落す。
コウの左手は、大総統の剣の柄の先を押さえていた。
「…一応ですよ。エドを斬らせるわけには行きませんから」
コウは槍の先に飛び込むと同時に、大総統が剣を抜かないように左手で押さえたのだった。
「相変わらずいい動きだな、“銀翼のコウ”よ」
「お褒め預かり光栄です。そして、ご無礼をいたしました」
手を放し、剣をブレスレットに戻すと、コウは大総統に向き直って深く頭を下げた。
エドはその様子に呆気に取られている。
「結果報告を楽しみにしていたまえ。若すぎる錬金術師よ」
大総統が部屋を出て、コウとエドはロイに連れられて建物を後にした。
「エードーvvv」
「な、何だよ・・・・・・・・・・・・・・・っで!!!」
ゴンッと言う鈍い音と共に、エドの頭に金槌が振り下ろされた。
むろん、振り下ろしたのはコウ。
にっこりと溢れんばかりの笑みだが、どこか黒い。
頭を押さえながらエドは冷や汗を流していた。
「…コウさん…???」
「ずいぶん勝手ことするよね?エドって…国家資格が取れなくてもよかったのかな、君は」
「イイエ…必要です…」
「あの時に失格を言い渡されてもおかしくなかったのよねー?」
「…スミマセンデシタ…」
「こんの豆エド!!」
再びゴンっとエドの頭に金槌をぶつけるコウ。
その様子をロイとリザが苦笑交じりに見つめていた。
「まったく…。こんな馬鹿は放っておいていいですからね、マスタング大佐。ホークアイ中尉」
「まぁ、君が大総統に刃を向けて無事でいられたのは彼女のおかげだがね、エドワード」
「うるせー…」
「エドの方がうるさい」
「・・・・・・・・・」
「マスタング大佐はこれからどちらへ?」
「何故今まで通り名前で呼ばないのかね?」
「…これでも“軍の狗”ですから」
「正式に軍に入っていない以上、君が敬語を使う必要はどこにもない。前のように呼びたまえ」
「じゃあ、ロイさん!」
「何だね、コウ?」
ロイはコウに名前を呼ばれると、彼女の頭を撫でながら問いかけた。
コウは嬉しそうに目を細める。
ここだけを見れば、まるで兄妹のようだ。
もちろん、それをよくは思わない少年が一名。
「だーーーッ!!コウ!帰るぞ!!!」
「は?え…!?ちょっと、エド!?」
コウの手を取ると、強引に引き摺っていく。
ロイとリザは突然のエドの反応に目を丸くしている。
どうしてもエドが放さないので、コウは早々に諦めてされるがままになった。
「じゃあ、ロイさんリザさんさよなら~…。また一週間後に来ますから!ルシア~おいで」
コウが手を差し出すと、ルシアは嬉しそうにコウの肩に飛び乗った。
「気をつけて帰りたまえ。一週間後を楽しみにしているよ」
「さようなら、コウちゃん」
ロイとリザは二人が去っていくのを笑顔で見送った。
「まったく…独占欲の強い子だな」
「あなたもそう変わりませんよ、大佐。エドワードくんの気持ちをわかってやっているのでしょう?」
「…何のことかね?」
「これでエドも軍の狗だねー…」
コウがエドの持つ銀時計を見つめながら言った。
彼女の手の中にも、同じ絵柄の彫られている銀時計がある。
「そうだな」
「これからどうするの?」
「賢者の石を探す。その為に旅に出る」
「そう言うと思ってた。私も行くからね」
「…そう言うと思ってた。アルにもそう伝えてある」
「さっすがー。わかってるねv」
「あのなー…一ヶ月やそこらの付き合いじゃないだろ?」
エドは呆れ顔を見せたまま、草原の上に転がった。
コウも横に腰を降ろす。
「見つかるといいね」
「あぁ。絶対取り戻す。お前の…記憶も」
「…本当はあの時の記憶なんていらないんだけどなぁ…」
「じゃあ、コウはそのままにしておくか?それもいいんじゃねーの?」
「ダメ。っていうか嫌。私は絶対父さんと母さんの仇をとるんだから」
「そっか」
コウが持っていかれた物。
あの人体錬成の時に、偶々遊びに来たコウが巻き込まれた。
その代償として、失った物。
それは、両親が殺された時の記憶。
犯人の、唯一の手掛かり。