Free  act.52

「コウはお前達の仲間なのか?」
「…それがどうした」
「今旅団のメンバーは足りているはずだ」
「コウにナンバーはない」
「―――…彼女を旅団から解放しろ」

クラピカの赤い眼がクロロをしっかりと睨みつける。
だが、そんな物に動じるようなクロロではなかった。

「解放…か。俺達がいつコウを捕らえたんだ?あいつと話したんじゃないのか?」
「……コウが理由なしに旅団に入るわけがない」
「戯言だな。コウの何を見てきたのか知らないが、あいつは自分の意思で俺達の仲間なんだ」
「違う!!」
「だが…どこまで続くかはあいつ次第だな」

浮かぶのは悲しげなコウの微笑み。
ただ只管クロロの身を案じた彼女の眼は、真実を語っていた。
強制されているわけではなく、自らの意思でクロロ…旅団に居るのだと。

















空へと上がった飛行船を、コウは静かに見送っていた。
隣に立つクロロは何も語らない。
いや、語れないのだ。
旅団員との接触・会話は死を意味する。
触れることすら、叶わない。

「……大丈夫よ」

小さくなっていく飛行船を見つめたまま、コウが小さく言った。
クロロの視線がコウを捉える。
漸く飛行船から目を離したコウは、クロロの方を振り返って微笑んだ。

「ナンバーを持つ者に対してだけなんですって。彼が教えてくれたわ」

未だ口を開かないクロロに歩み寄るコウ。
彼の真正面に立つと、そっとその頬に手を伸ばした。

「“癒風。”」

頬に触れるか触れないかと言う位置で念を使う。
風が治まった頃には、殴られた痣は綺麗に完治していた。

「よし!これでいつも通りの男前」

満足そうに微笑むと、コウは頬から手を放そうとした。
反射的にその手を掴もうとして自分の手を伸ばすが、それは途中で空を掴む。
自分の手を追って来ていた彼の手が止まると、コウは不思議そうに首を傾げた。
だが、すぐに彼の行動の意味がわかったようでゆっくりとその手に自分の手を絡める。

「大丈夫よ。私なら触れても。クラピカが嘘をつくことはないわ」

安心させるように微笑むコウ。
死を恐れているわけではない。
それでも、コウの前で…
しかも自分に触れたことが原因でクロロが死んだとあれば、コウが傷つくのは目に見えていた。
故に自分から触れることの出来なかったクロロ。
しかし、コウはいとも簡単にその壁を乗り越えてきた。

「敵わないな、お前には」
「そう?」

コウはまったく気にした様子を見せなかった。

「それはそうと…コウ」
「何?」
「何で残ったんだ」
「いけなかった?」
「俺の不在中は旅団のリーダーをしろと言ってあっただろう?」

よくよく考える事でもない。
コウ達を乗せてきた飛行船はすでにその影すらも残っておらず、この場に居るのは二人+二匹だけだった。
この場に残ると言う事、すなわちクロロと共に行くと言う事を示している。

「んー…雇ってもらおうと思って」
「は?」
「仕事のない何でも屋を雇ってくれません?除念が完了するまでの間サポートとして」

05.04.20
Rewrite 06.04.01