Free Ending クロロ
「なーんてね。それはただの口実。今ある仕事は断ってあるけどね」
「…ちゃんと話せ」
「はいはい。いくらクロロが強いって言っても念が使えないんじゃ高が知れてるでしょ?
だから、私が一緒に居ようと思って。それに…」
言いながらポーチの中を漁る。
目的のものを取り出すと、クロロに向かって突き出した。
それは以前ネオンに占ってもらった紙。
「旅立つ人のお供が吉―――みたいだし」
「…そうか」
「そう言う事」
「なら…情報屋に依頼するか」
諦めた…と言うよりも納得した感じの声色でそう言ったクロロ。
一瞬の間を置いて、コウが満面の笑みを見せた。
「ありがと。クロロなら安くしとくからね」
「…金は取るのか…」
「当然!一応仕事だし?」
悪びれた様子もなく笑うコウに、クロロはすでに慣れていた。
ただ付いて来ると言い張る様な女よりもずっといい。
実力から言っても申し分ないだろう。
本気で対峙したことはないからどちらが強いかと聞かれれば答えに困るが。
もっとも、大人しく守られるつもりなど更々ない。
「ゾルディックの方はいいのか?」
「…何で?」
「婚約者だろう?」
「あぁ、そう言う事。大丈夫。イルミとはお互いに束縛しないっていう約束だから。
それに……あくまで表向きな事だからね。私が自立するまであの家にお世話になる為に用意してくれた関係」
ふと、コウが微笑を浮かべながらも真剣な表情を見せる。
「もう…潮時かと思ってるし」
「コウ?」
「私十分一人で生きていけるから…そろそろあの家のお世話になるのもやめようと思ってるの」
コウの言葉に、クロロは目を見開いた。
彼は知っているのだ。
コウがどれだけあの家に対して思い入れがあるかと言う事も。
どれだけ感謝しているのかと言う事も。
それだけに、コウが言っていることに驚きを隠せなかった。
「そんなに驚かないでよ。何も嫌いになったとか、愛想が尽きたとか…そう言うわけじゃないんだから」
「なら、何で抜けるんだ?」
「…いつまで経っても自分の足で歩けないから」
静かにそう言って、星空を見上げる。
「ずっと…イルミやシルバさん…ゾルディックの皆に甘えて、スフィリアの名前から逃げてた。
でも、逃げるのやめようと思う。コウ=スフィリアに戻るわ」
はっきりとした声で、コウはそう告げた。
胸に光るペンダントを指で弾く。
「一番にクロロに言っておきたかったの」
「そうか」
「でも、まずはクロロの除念からね。持ち前の情報網を生かして屈指の除念師を探してあげるわ」
「いや、決心してあるならそっちを先に済ませた方がいい」
「そう?じゃあ…お言葉に甘えさせてもらうわ。その後は除念に集中できるね」
「頼りにしてる」
笑顔を浮かべているコウに向かってクロロも僅かに微笑んだ。
コウの肩からクロロの肩へとスノウが移動する。
嬉しそうに擦り寄るスノウをあやしながら、クロロは空を仰いだ。
「東…… か」
踏み出した一歩は乾いた土の上に静かな音を立てた。
06.04.01