Free  act.44

興奮冷めやらぬ様子だったゴンとキルア。
彼らが満足いくまでその話を聞き、コウはそれが終わった頃を見計らって彼らに別れを告げた。
再度無茶をするな、と念を押しておいたが、視線が泳いでいた事からまだ何か思うところがあるのだろう。
気づいてはいたがコウはそれを追求せずに帰ってきた。
結局のところ、無茶をしようが彼らが無事ならばそれでいいのだ。

「ただいま……って、どうしたの?」

キルアとゴンから解放され、ようやくアジトへ戻ったコウ。
アジトに一歩入れば、中の空気が険悪な事くらいはすぐに気づいた。
一番手近にいたパクノダの方へと歩み寄って尋ねる。

「今夜ここを立つんですって。でも、ノブナガが鎖野郎にこだわってるのよ」
「ああ、なるほど…。しかし今夜って…クロロもまた急ね」

やれやれと溜め息をつきながら事の成り行きを見守る。

「ノブナガ、俺の質問に答えろ」

クロロが念能力である盗賊の極意(スキルハンター)を取り出す。





生年月日やら血液型やらと質問を繰り返すクロロ。
あまりにも今更な質問まで飛び出す始末で、ノブナガがいい加減に怒り出しそうだった。

「あの子の能力ね…」

生年月日、血液型と来た時点でコウはクロロの思惑に気づいた。
口元に笑みを浮かべて、ノブナガを占う自動書記を見ている。
コウはもう大丈夫だろうと、自分のケータイを操作していた。





そうしている間に話は進む。
最終的に折れたのはノブナガ。
クロロはちゃんとノブナガを納得させたようである。

「コウ、ちょっと来てくれ」
「何?」

コウは返事を返すと、皆に紙を渡しているクロロの傍まで歩み寄る。
クロロの足元に伏していたスノウが嬉しそうにコウの肩へと飛び乗った。
キルアとゴンとの話が長引くと判断した時点でスノウを先にクロロの元へと走らせていたのだ。
何かあった時の為に。

「ご苦労様、スノウ」

優しく白い毛を撫でると、コウの後ろについていたルシアの上へと乗せた。
そしてクロロの方へと向き直る。

「一人ずつ占っていたら時間が掛かるからな。手伝ってくれ」
「了解。何人手伝えば?」
「…三人だな」
「ん。パクとマチと…後はフランクリンでいい?」
「ああ」
「って事だから、三人は私によろしく」

クロロから少し離れた瓦礫に腰を降ろすと、パクノダの紙を受け取った。
すでにコウの手の中には彼女の念能力で取り出したペンが握られている。

「コウも占えるの?」
「うん。頂いてきたからね。んじゃ占いましょうか」

パクノダから手元へと視線を落すと、コウは念能力を発動させる。
















「それじゃ班を決める。来週はこの班を基本に動き、単独行動は絶対に避けること。
シズク、パクノダ、マチ。コルトピ、フィンクス、フェイタン。
ノブナガとシャルナークは俺と。ボノレノフ、フランクリン、ヒソカはここで待機」

そこまで話すと、クロロはコウの方を向いた。

「コウはどうする?仕事があるなら別行動でもいいが…」
「そっちの仕事の方は大丈夫よ。面倒なのは終わらせてあるから。誰に着いて行った方がいい?」
「好きにすればいい。コウの場合はそいつらもいるからな」
「…じゃあ、クロロについていくわ」
「わかった」

話が落ち着いた頃、マチが声を上げた。

「子供がさ、ここの場所を知ってんだけど。まぁ、鎖野郎とは関係ないみたいなんだけど。やっぱりどうも気になるのよね」
「子供?」

クロロがマチの方を向く。
マチの言葉に思い出した!とばかりにノブナガの顔が輝いた。

「そうだ。忘れてたぜ団長!!そいつの入団を推薦するぜ!!」
「ちょっと!こっちはそんなつもりで話してんじゃないよ!」

ノブナガがマチの言葉をまる聞かずに、あの時の事を話し出す。
一応彼から大まかな話は聞いていたが、マチと二人での説明はより細かく状況を知る事が出来た。

「(キルアとゴンか…。ノブナガがご執心なのはゴンね。)」

忘れてくれてはいないようで…コウは誰も知らない所で静かに溜め息を漏らした。


















「コウ、少しいい?」
「ん、いいよ」

パクノダに後ろから声をかけられると、コウは彼女に続いて歩き出した。

「時間掛かるの?」
「少しよ」
「そっか。クロロ、ちょっとパクと話してくるわ。すぐに済むみたいだから」

首だけ振り向いてそう言うと、クロロが頷いているのが見えた。
そして再びパクノダの後を追う。
アジトの外に出ると、パクノダはすぐに足を止めた。

「どうしたの?」
「あなたに頼みがあるの」

真剣な様子に、コウもその表情を引き締めた。
そして、口を挟む事なくパクノダの言葉を待つ。

「あたしの能力を貰って欲しいのよ」
「パクの…能力を?」
「ええ。コウの念なら団長とは違ってなくならないでしょう?だから…」
「…私に断る理由はないけど…。さっきの占い?」

コウがそう問えば、パクノダは頷いた。

「もしもの時のため。あたしの能力は後々役に立つでしょう?」
「……………」
「それに…コウならちゃんと使い方をわかってくれると信じてるわ」
「…わかったわ」

パクノダの言葉に頷いた。
コウは団員の能力を複製していない。
もちろん、幾度となくチャンスはあったのだ。
それでも決して彼らの能力を複製する事はなかった。
それがコウなりの信頼の証だった。

「パク…」
「そんな顔しないで。大丈夫よ」

心配しているのが表情に出たのか、パクノダは苦笑交じりに微笑んだ。
まだ知る由もない。
二人の心配が杞憂に終わらない事を。

05.02.07
Rewrite 06.03.15