Free  act.40

「ところで…十老頭はどうするの?あの人たち邪魔でしょ?」
「それなら頼んである」
「………私の知ってる人?」
「ああ」
「…それなら大丈夫ね」
「本当にノストラードの娘は来るのか?」
「ほぼ100%ね。あの子の行動から考えたら護衛の目を掻い潜ってでも来るでしょう。信じられない?」
「いや。コウが言うなら確かだろう」

そう言って、クロロは窓の外の景色へと目をやった。

「ああ、あの子じゃない?ネオン=ノストラード」

検問の所で何やら言葉を交わすこの場には不釣合いな一人の少女。
彼女は暫く検問の男と口論していたようだったが、諦めたのかそこを離れて歩き出した。
コウは目だけで少女を指しながらクロロに話し掛ける。

「どうします?団長」
「確保」
「仰せのままに」

そうして、車はネオンの脇へと停車した。
ウインドウを下げて彼女を見れば、突然の事に驚く双眸とかち合う。

「ご機嫌斜めね、どうかしたの?」

ネオンは相手が女性と言うことで安心したのか、先程の遣り取りを掻い摘んで話す。
全て見ていたのだが、時折相槌を打つ辺りコウの人の良さが伺える。

「それなら一緒に来る?」
「え、でも…」

やはり初対面と言うことで抵抗はあるのだろう。
視線を彷徨わせた彼女に、コウはにっこりと笑った。

「同好の士をこのまま帰らせるなんてつまらないでしょ?それに、女の子の一人歩きは危険よ」

コウの言葉を聞き、ネオンは少しだけ考えた後に首を立てに振った。











コウは検問の警官に参加証を差し出す。

「OKです。どうぞお通りください」
「ありがとう。お仕事頑張ってくださいね」

にっこりと返せば、頬を染める警官。
そんな彼らに楽しそうに口元で笑みを作りつつ、車を中へと進めた。

「ホントにありがとう」
「どういたしまして」

ネオンのお礼に、クロロが人の良い笑みを見せた。
それをバックミラー越しに見ながら、コウは車を会場の正面につける。

















「ごめんなさい。私ちょっと電話をしてくるわね」

そう言うと、コウはクロロとネオンから離れた。
彼らから離れて人気のない廊下へ出ると、ルシアとスノウを呼び出した。

「腕の立つ奴を見つけたら教えて。手は出しちゃ駄目よ」

それに答えるように一声あげると、二匹は音もなく走り出す。
それを見送って、コウは二人の元へと戻ってきた。

「お待たせ。どうしたの、それ」
「お帰り。占ってもらってたんだよ。ねぇ、コウも占ってあげてくれない?」
「いいよ!じゃあね、この紙に自分のフルネームと生年月日と血液型を書いて」

そう言って、ネオンから一枚の紙を渡される。
コウはクロロの隣に座ると、それにペンで言われた物を書き込んでいった。

「はい、これでいい?」
「うん。コウ=スフィリア…20歳!?大人っぽいー…」
「あら、それって老けているって事?」

クスクスと笑いながらコウはそう言った。
途端にとんでもない、とネオンは首を振る。

「ううん。そう言う意味じゃないの。凄くお似合いね!」

ネオンが裏表のない笑顔でそう言った。
しばし言葉を失ったコウだったが、にっこりと微笑む。

「………ありがとう」
「じゃあ占うね」

クルクルとペンを回していたかと思うと、ネオンの目が虚ろになる。
そして、念能力が発動した。
コウはそれから一時も目を逸らさずに見据えていた。
最後の分が書き終わると、ネオンは紙を見ずにコウに渡す。

「ありがとう。へぇ…詩なのね」
「うん。見方わかる?」
「大体わかるわ」

そう答えると、コウはじっと詩を読み始める。

「………クロロのものを見る限り、週ごとに書いてあるんだと思うけど…。これはどう言う事かしら?」

隣に座るクロロに紙を寄せて問う。
クロロもその紙を覗きこんだ。

「………ねぇ、最後の週の分しか書いていないなんて言う事がよくあるの?」

クロロがネオンにそう問いかけた。

「そんなのは一度も聞かないけど…。後の週が欠けるって言うのはよくあるの。その人が亡くなるとかで」
「そっか…じゃあ、占えなかったのかもしれないわね。ありがとう」
「…そろそろ時間だね。行こうか」

クロロの言葉をきっかけに、3人は席を立った。

















「どう言う事かしらね」

コウが窓際で壁に背を預けながら、窓の外に広がる夜景に視線を落としていた。
手には、先ほどの占いの結果の紙。

「コウが占っている途中で何かしたとか?」
「覚えはないけど…。これの所為かも知れないわね」

そう言って、胸に光るペンダントを持ち上げた。

「厄災を取り除くらしいわ。どうも念が込められているみたいなのよ」
「つまり……コウにとって害となる事が占われたって事か…」
「わからないけどね」

指先でピンッと弾くと重力に従って落下し、先ほどの位置に落ち着いた。

「クロロの最後のとシンクロしてるみたい。噛み砕くと、旅立つ人のお供が吉―――ってところね」

ポーチに紙を直しながらそう言う。

「そう言えば…ネオンって子に何を話したの?勝手な勘違いをしてたみたいだけど?」
「ただ恋人だって説明しただけだよ。その方が自然だろう?」
「あぁ…それであの反応ね…」

その時、部屋の中にルシアとスノウが入ってきた。
コウが笑顔を浮かべて迎え入れる。

「お疲れ様、ルシア、スノウ」

スノウはコウの肩に乗り、ルシアはコウの腰元に擦り寄った。

「…暗殺チームの一人がこっちに接近中。私はどうする?」
「今から出て行っても鉢合わせだろう?邪魔さえしなければOK」
「了解」

窓の傍にいるコウには移動の必要もなかった。
再び外の夜景へと視線を落す。

「ああ、皆に連絡を入れておいてくれるか?“セメタリービルで暴れるから来い”って」
「条件は無し?」
「いや…。“派手に殺れ”が条件だ」
「珍しい」

クスクスと笑いながら、コウはメールの本文を打ち込んで送信した。
連絡は蜘蛛の手足へと送られる。
そして、演奏は幕を開けた。

05.01.31
Rewrite 06.03.10