Free  act.34

「クロロ。今日蜘蛛の皆が集まるんでしょ?」

コウが上の階からクロロを呼ぶ。
見上げれば、下の階を見下ろすコウと目が合った。

「ああ、そのうちに集まるだろう」
「そっか。じゃあ、明日でいいんだけど…ちょっと時間が欲しいの」
「明日……ああ、別にいいぞ」
「ホント?ありがとう」

にっこりと微笑むと、コウはヒラリとそこから下の階に降りた。
軽い足取りで着地すると、そのままクロロの傍まで歩く。

「悪巧みか?」
「まさか。ヒソカじゃあるまいし…」
「……そうだな」
「可愛い弟と会う約束なの。その友達もね」
「弟……ああ、イルミの弟か…」
「そうそう」

穏やかな笑みを見て、クロロも釣られて笑みを浮かべる。
普段からあまりきつい表情を見せない彼女だが、彼らのことを話す時にはそれ以上に優しいそれに変わる。

「連絡があれば、いつでもメールしてくれればいいから」
「わかった」

クロロの隣に座ると、コウは一枚の紙切れを取り出した。
それをクロロに渡す。

「1日の競売の分」
「結構あるな」
「うん。どうやるか知らないけど…それなりに面子を選んだ方がよさそうよ」

競売品の量を見て、クロロが顎に手をやって考える。
メンバーを考えているのだと踏み、コウは彼が口を開くまで沈黙を貫く。

「ウヴォーギン、シャルナーク、フェイタン、フランクリン、マチ、ノブナガ、シズク…こんな所だな」
「後は居残り?」
「ああ」

メンバーを思い浮かべて、コウは頷いた。

「じゃあ、私も居残りなのね」
「行きたいか?」
「オークション会場の人たちは全員始末でしょ?居残りでいいわ」
「そうか。……どこに行くんだ?」

クロロが立ち上がったコウに向かって問う。
コウは笑みを浮かべて、こう答えた。

「皆のお出迎え」















翌日、9月1日―――
コウは早くから街へと繰り出していた。
すでに市場は多くの人で賑わっている。
この中からキルアとゴンを探すのは骨の折れる作業だった。

「…とりあえず、メールでも入れておきましょうか」

カチカチとメールを打つと、そのままキルアのケータイに送信した。
完了のメッセージが画面に出ると、コウはケータイを鞄に戻した。

「ルシア、キルアを探せる?……って、コレだけ人がいれば難しいわよね、私が探すよりも」

ルシアは基本的に匂いを追う。
ルシアとスノウは普通の狼よりは感覚が異常なまでに優れている。
故に、これだけ人で賑わっている場所では嗅覚は殆ど宛にならないのである。
申し訳なさそうに尾を垂れるルシアを見て、コウは微笑を浮かべた。

「気にしないでいいのよ。スノウに頼むから」

名前を呼ばれると、スノウはポーチからコウの肩へと移動する。
スノウの鼻先を遊びつつ、コウは頼んだ。

「キルアとゴンの念を辿って」

嗅覚に優れているルシア。
念能力に長けているスノウ。
コウにとっては、仕事でもプライベートでも頼りになるパートナーなのである。

「まだ覚えたてだから多少は不安定かもしれないわね」

少し前にキルアから受け取ったメールの内容を思い出して、コウはそう呟いた。
コウの肩でしきりに鼻を動かすスノウ。
程なくして、スノウが反応を見せた。
教えるように、コウに鳴き声を上げる。

「…了解」

教えられた場所へと、コウは足を向けた。
彼女だけが理解できるスノウの声の導くままに、ただ雑踏の中を歩く。


















とあるケータイショップ前。
そこには不自然な人だかりができていた。

「あの中?」

コウに聞かれると、スノウは「そうだ」と一声あげる。
どうしたものか、とコウが悩んでいると人だかりから拍手が起こった。

「な、何事…」

拍手を期に、人だかりが徐々にばらけ始めた。
ようやく中心の人物を拝む事が出来たコウ。
そこには目当ての二人……プラス一人がいた。

「キルア!ゴン!」

そう呼べば、二人が同時に声を発した人物の方を振り向く。
途端に表情を明るくするキルアとゴン。
人の合間を縫って、コウは二人の方へと歩き出した。
走り寄ってくる二人に、コウも自然と頬が緩む。

「「コウ!!久しぶりっ!!」」

寸分の狂いもなく重なった声。

「くす…相変わらず仲がいいわね」

そういい終わった途端、腰辺りに衝撃を受けた。

「~~~~~~っ。ちょっと位は加減して欲しいんだけど…」
「「あ、ごめん」」

走ってきたスピードを緩めずに、二人に飛びつかれたコウ。
いくら鍛えているとはいえ、女の身体で育ち盛りの少年二人を受け止められるほど頑丈でもなかった。
慌てて離れる二人に、息を落ち着けると笑みを見せた。

「久しぶりキルア、ゴン」

離れていた間に随分と成長したらしい二人に、コウは再度目を細めた。

Rewrite 06.02.23