Free act.11
第4次試験が始まると、コウは自分のターゲットを尾けていた。
情報屋であるコウが自分のターゲットを知ることなど、造作もない。
おまけにコウは二番目にトリックタワーを降りたのでゆっくりとターゲットを待つことが出来たのである。
さて、ここで第4次試験の内容を説明しておこう。
「って事で、私が説明してあげる。今、暇だし」
コウは口角を持ち上げて微笑んだ。
「まず、受験生は一枚ずつクジを引く。クジって言っても要はカードよ。まぁ、そんな事はどうでもいいわね。
そのカードには受験生の番号が書いてあるの。もちろん、一人一枚ずつあるわ。
このクジで決定するのは、狩る者と狩られる者。
自分の引いたカードの番号が自分の狩る者。つまり、ターゲットって事。
もう勘のいい人はわかったかしらね?
自分が誰かの番号を狙ってるって事は、自分の番号も誰かに狙われてるって事。
ここまではいいかしら?」
第3次試験突破が25人。
故に、カードも25人全員の分が用意されている。
コウが引いたカードには198番と書いてあった。
「続けるわね?
この試験を突破するには6点分のプレートが必要なの。
まず、自分のプレート。あ、プレートって言うのは受験番号が書いてあるこれの事だからね。
自分のプレートは3点。そして、自分のターゲットのプレートも3点。
つまり、自分のプレートを取られずにターゲットのプレートを奪えばこの試験は通過ってわけ。
ちなみに、ターゲット以外のプレートは1点ね。
例えて言うと…私の場合。
私の番号は1番。このプレートを持ったままターゲットである198番のプレートを取れば、これで6点。
この二枚のプレートを守りきれば合格ってことよ。
ゼビル島が今回の試験の場所。
そして、そこの滞在期間は一週間!その間に6点分集めればいいのよ。
ま、わりと楽な試験ね。さっさとターゲットからプレートを頂戴して身を潜めればいいだけの話だから。
じゃ、私からの説明はこんな所ね」
ピンッと己のプレートを弾き、コウは再びターゲットに目を向けた。
「はぁ…情けないなぁ…」
コウは木の上からターゲットを見ていた。
どうやらコウのターゲットであるイモリはキルアのプレートを狙っているようだ。
だが………
「アレじゃキルアじゃなくても気づくでしょ…」
尾行は随分お粗末なようだ。
ルシアにはその毛色が目立つ事から、呼ぶまで好きに行動していいと言ってある。
少しばかり不安定な木の上に腰を下ろし、コウは肩を竦めた。
「ゴンは…大丈夫かな…?」
ふと、コウは船の上の事を思い出した。
『え…じゃあ、ゴンのターゲットはヒソカ?』
ゴンの引いたカードは44番。
つまり、ヒソカの番号だったのだ。
ヒソカはコウですら色んな意味で一目置いている存在である。
『これがもしただの決闘だったら俺に勝ち目はなかっただろうけど。
プレートを奪えばいいってことなら何か方法があるはず。今の俺でも…少しはチャンスがある。
そう思うとさ、怖いけど…やりがいはあるよ』
ゴンはそう言っていた。
その時のゴンの表情を思い出して、コウはふっと微笑む。
「ま、ゴンなら何とかやりそうね」
そう呟くと、コウも自分のターゲットに集中する。
もっとも、集中するまでもないくらいの相手だが………。
「にしても………ヘタレな男ねー…イライラしてきたわ」
気の長いコウも、そろそろ限界が近づいていた。
もちろん、コウにとってはプレートを奪うなど造作もないこと。
これくらいの事ならルシアでも出来るくらいだ。
が、折角ここまで残ったのだからキルアと対峙してからにしてやろうと言う哀れみから待っているだけ。
「折角の人の好意を無にしないで欲しいわ…」
コウが呟いた時、キルアがその足を止めた。
殆ど声を出していないし、コウの声が届いたわけではない。
「ふぅ――4次試験開始からずっと尾けてるけど、バレバレだぜ。
出てこいよ。遊ぼうぜ」
「やっぱりキルアも気づいてるみたいね。ま、これくらい気づかないようじゃゾルディック家ではやっていけないけど」
コウが口の端をあげる。
「さて…話がつき次第私もプレートをもらおうかしらね」
「時間のムダだぜ。いくら尾けまわしたって俺はスキなんかみせないよ」
キルアがそう言うと、イモリの方がニヤリと口の端を上げた。
「何とも…情けない男ー…自分から出て行けってーの」
どうやらコウはイモリのような男は嫌いのようだ。
「来ないならこっちから行こっと。ホントいやなんだよな―――。どうせ倒したって1点だろーしさぁ」
キルアが動き出すと、イモリが目に見えて反応を示した。
と、その時コウは近くに別の人間の気配を察知する。
気配の元を辿ると、それがイモリの兄弟のものであることがわかった。
「待たせたな、イモリ」
「兄ちゃん!!」
二人の男が林の中から顔を出した。
「ちょいと手間どっちまった」
「そっちはもう終わってるよな。後でウモリのターゲットを探しに行くぞ」
「ん?」
そう言ってアモリとウモリはキルアを見る。
――ドカ ゴン――
「バカかお前!!あんなガキまで俺達がいなきゃ怖くて戦えねーのか!!」
「ち、ちがうよ、アモ兄ちゃん。子供を痛めつけてもかわいそうだろ。寝てるスキにでも盗んであげようかと思ってさ」
イモリが虚勢を張ってアモリとウモリに言った。
もっとも、全く信用されなかったようだが。
「兄ちゃん達がそんなん言うならしかたないぜ。やってやるよ」
さっきとは打って変わった態度でイモリがキルアの前に立った。
「なぁ、ボウズ。プレートをくれねーか。おとなしくよこせば何もしない」
「バーカ」
イモリの問いかけに、キルアが短く答える。
そして……イモリの蹴りがキルアの鳩尾をえぐった。
キルアの身体はいとも簡単に後方へ吹っ飛ぶ。
「あーあ、いわんこっちゃない。バッチリみぞおち。ありゃ地獄だぜ」
イモリがそう言っていたが、キルアは全くダメージを受けていなかった。
足を振り上げ、その反動でスタッと起き上がる。
「198番か」
起き上がったキルアの手には、198番のプレートがあった。
イモリが慌てて自分のポケットを探る。
そして困惑の表情を向けた。
「ちなみにキルアのお目当てはこっち」
その場に場違いなほど綺麗な声が響く。
Rewrite 06.01.22