廻れ、

- 廻 れ 、 廻 れ 。  時 空 よ 、 廻 れ -

-- 番外編:2nd Trip in銀魂 08 --

まさか、また彼と顔を合わせる事になるなんて。
紅は目の前で薄く笑みを浮かべる男を見て、短く溜め息を吐き出す。

「私を追ってきた…と言うわけではないわよね?」
「さぁな」

そう言いながらも彼、高杉は楽しげに笑う。
彼ならば、自分の楽しみのために紅を追うくらいの事は平気でやりそうだと思った。
それが江戸の町へのテロに繋がるのは喜ばしくないけれど。

「ターミナルに爆破予告。何だか、あなたには似合わない気がするけれど」
「あれは下っ端が勝手にやった事だ。俺は知らねぇよ」
「…無責任」

思わず呟いた言葉に、彼は違いねぇ、と答えた。
突然の爆破予告に、その場は騒然としている。
人々がわれ先にとターミナルから遠くへと逃げる中、二人は一定の距離を開けて立っていた。

「真選組に保護されたらしいな」
「成り行きで、ね」
「連れとは再会したか」

高杉の視線がちらりと町に向かう。
その先に、きょろきょろと周囲を見回す悠希の存在を見つけ、紅が反応した。

「悠希!?」
「あ、紅!!やっと見つけた!!」

声を聞いて人の流れに逆らいながら近付いてきた悠希は、紅の無事な姿に安堵する。
そして、彼女と対峙していた高杉を見て眉を顰めた。

「屯所に帰ったら、高杉の名前を聞いて飛び出して行ったって言うし…探したわよ。
まさか、本当に高杉と会っているとは思わなかったけど」
「私の関係でこの人が来たなら彼らに迷惑をかけると思ったから。…どうやら、違ったみたいだけど」

ちらりと高杉を横目に見て、彼女は肩を竦めた。
丁度その時、ターミナルではない場所で爆発が起こる。
彼女らの場所から程近いところで起こったそれにより、粉塵が彼女らを襲った。

「チッ…早まりやがって…」

視界が悪い中、そんな声だけが聞こえた。
指示通りに動かない下っ端に苛立ちを感じているらしい声。
それを聞きながら、紅は隣の悠希の腕を掴んだ。

「紅?」
「視界が悪い。離れないようにして」

この視界の中で悠希を見失ったら、見つけるのは一苦労だろう。
何故か高杉自身が危険だとは感じないけれど…鬼兵隊そのものは、警戒すべき対象だ。

「っ」

ゾクリと背筋が逆立つ。
咄嗟に悠希の腕を引いて身体を反転させ、自由な手で刀を抜いた。
刃がぶつかり合い、ギィン、と鈍い音を放つ。

「おやおや…これに気付くとはねぇ…。随分とイイ勘してるじゃないか」
「…人斬り似蔵…!」

紅の背に庇われた悠希が声を上げる。
それが誰なのか知る由もない。
紅にとっては相手が「人斬り」であるというだけで十分だ。
悠希の腕を放してもう片方の小太刀を抜き、岡田の心臓めがけて突き出す。
即座に鍔迫り合いを逃れて一歩身を引いた彼は、にやりと口角を持ち上げた。

「危ない危ない。迷いのないイイ突きだ。それで何人殺した?」

楽しげな声に答えず、紅は彼との間合いを詰める。
一気に勝負をつけるつもりらしい。

「紅…!」

煙が晴れてきた中、遠ざかる彼女の背中。
その身を案じて紅の名を呼ぶ悠希に出来る事は何もない。
ぎりっと拳を握った。

「どいつもこいつも勝手に動きやがる…」
「っ高杉…」

後ろから聞こえた声に振り向けば、そこには煙管を手にした高杉がいた。
火をともしていないそれを握る彼の表情は、どことなく苛立っているように見える。

「あんたの部下でしょ!?今すぐ奴を止めてよ!!」
「あの女が負けると思うのか?」
「負ける負けないの問題じゃないわよ!」

そう叫んだ悠希の耳に、パトカーのサイレンが聞こえてきた。
どうやら、真選組が到着したらしい。
紅もまたそれに気付いたらしく、岡田の刀を往なして懐へと入り込み、勢いのままに足払いをした。
体制を崩しながらも繰り出される追撃を小太刀で弾き、開いた胸元を袈裟懸けに斬る。
そして、そのまま畳み掛けるように刀の柄を額へと叩き込んだ。
岡田の身体が古びた建物へと吹き飛ぶ。
それを見ていた悠希は唖然とした表情を浮かべた。
隣で楽しげに目を細めた高杉など目に入っていないだろう。

「…強い…」
「悠希!」

髪を払った紅が悠希の名を呼び、近付いてくる。
紅の元へと駆けようとした悠希は、ぐいと腕を引かれた。
驚いて振り向く彼女の手に、高杉の手から何かが握り落とされる。

「あの女の忘れもんだ」
「え―――」

それが何かを確認する前に、彼女のすぐ傍の建物がドォンと爆発した。
ギリギリのところで彼女の元に辿り着いた紅が、彼女を引き寄せる。

「悠希!!」

逃げるよ、と彼女の腕を引いた紅。
頷こうと紅を見上げた悠希は、彼女の背後に見えた光景に目を見開いた。

「紅、後ろ…っ!!」

その声に背中を振り向いた紅の目に、自分たちに迫る建物の瓦礫が見えた。
逃げる暇などない。
崩れ落ちたそれが、コマ送りのように二人に迫ってきて、そして。


視界が、闇に染まる。
チリン、と音が聞こえた。

10.05.08