夢追いのガーネット
Episode 00
すでに馴染みの場所となっている屋上への階段の踊り場。
そこに足を運んでいると、自然と聞こえてくるのは彼らの楽しげな声。
時折それに混じるのは、悔しさを隠し切れない心が渇望する叫び。
「またサボってるの?」
凛とした声はその場にはあまりに不似合いなもの。
しかし、覚えのある声に彼らの視線が階段へと集う。
そんな視線の中に見え隠れするのは、僅かな期待。
「…どうだった?」
彼らを代表して声を上げたのは、健康的に焼けた肌の彼。
4人分の視線をその身に受けていた少女はただ首を横に振った。
「ごめん。生活指導の馬鹿が最後まで文句つけてきたわ」
鬱陶しい奴、と言って彼女はその黒髪を掻き揚げる。
いつもは結い上げている髪を解けば、背中を覆うように黒髪が流れた。
「部を率いる部長と、部を作る最低限の人数が居ないと許可できない。だってさ」
「それなら俺が部長をやったらどうだ?」
「駄目。成績優秀者じゃないと認めないって。しかも私以外で」
苛立ちを隠すことなく乱暴に腰を下ろすと、彼女は組んだ足の上に腕を付く。
不貞腐れた様子の彼女は、彼らにとっては唯一の希望であり、そして仲間と呼べる人物だった。
普通の女子生徒ならば不良と近寄らないような自分達の声を聞き、それを実現しようとこうして努力してくれる。
感謝こそすれ、今回の失敗を責める者など誰も居なかった。
「…あんた達の学力を上げるっていっても………………………高が知れてるしね…。
とりあえず、来週の会議でも頼んでみる」
前半部分で彼らを一瞥するが、にへらと浮かべられた苦笑に溜め息混じりに後半を紡いだ。
こんな所でサボってばかりで碌に授業に参加していない、すでに彼らはどうこう出来るレベルではない。
引き戸から外へと身体を滑り出すと、彼女は空を見上げた。
「…誰かいい人いないかなぁ…」
その願いは、それから一ヶ月後に叶えられる事になる。