時舞う旅人 00
「鋼の。面白い噂を聞いた事があるかね?」
「面白い噂?どーせ大佐の言う“面白い”っつーのは俺にとっては迷惑な噂なんだろ?」
フラメルを背負った赤いコートを羽織り、金色の髪を三つ編みにした少年。
鋼の錬金術師と言う二つ名を持つ彼は、名をエドワード・エルリックと言った。
「はは、違いない。しかし、今回は違うぞ?」
男性は笑う。
彼の名はロイ・マスタング。
大佐と言う階級と共に、国家錬金術師と言う位置にいる。
二つ名は焔の錬金術師。
「“時の踊り子”を知っているか?」
「…何だそれ」
「何でも、彼女の踊りは時を止めるらしい。あくまで噂だがね」
「は!まさか大佐は信じてんのかよ?ンな事あるわけねーって」
エドは笑った。
しかし、ロイは口元に笑みを携えたまま手を組む。
「君は運がいいな。現在彼女はイーストシティに滞在中らしい。君も一度見てみればいい」
「はいはい。機会があればな」
まるで信じていない、と言った様子でエドは答えた。
「んじゃ、アルが待ってるから行くとするか」
革張りのソファーから立ち上がると、エドは軽く伸びをする。
そしてドアの方へ歩いていく彼に向けてロイが口を開いた。
「鋼の」
「ああ?」
「私に迷惑をかけるなよ」
「……あいよ、大佐殿」
後ろ手に手を上げて答えると、エドはそのまま部屋を出て行った。
05.08.02