Raison d'etre sc.000
「一護」
何の気なしに、私は彼を呼んだ。
面倒くさそうな顔をしながらも律儀に私の方を振り返る。
その時の一護の表情が好きだった。
「何だ?」
「…特に用はないんだけどね」
「はぁ?」
変な奴、そう言って一護は再び前を向いた。
半歩分だけ後ろを歩く私。
私の歩調に合わせて一護は歩く。
「好きだよ」
小さな声で言った。
「…知ってる」
今度は振り向かずに返事を返してきた。
少しだけ足を速めて彼の横顔を見れば――
「真っ赤…」
「ほっとけっ」
耳まで真っ赤にした一護がいた。
ここまで反応するとは思っていなかった私は、何だか無性に嬉しくなる。
些細な事だろうけれど、ただ本当に。
「…ずっとここにいろよな」
「うん」
ただ、ここにいられるだけでよかった。一護の横にいられるだけで。
一緒に歩けるだけで…よかった。
Rewrite 05.10.30