夢追いのガーネット
Idle talk 20.5
外から帰ってきた翼は、階段下の柱に背中をもたれさせている暁斗を見つける。
こんな所で何をしているんだと問いかける前に、彼の耳に声が届いた。
暁斗の脇から階段の踊り場を見上げ、彼の表情は瞬時に歪む。
「――――あいつらっ!」
「まぁ、待て」
駆け出そうとした翼は、後ろから暁斗によって止められる。
しっかり襟を握る彼の手は解ける事無く、翼は半ば睨みつけるようにして暁斗を見た。
「紅に何かあったらどうするんだよ!」
「あいつなら相手したくなければ適当にあしらってるって。何か考えがあるんだろう。黙って見てろ」
「…暁斗は心配じゃないんだ?」
「過保護も度が過ぎると相手の心を殺しちまうぜ、翼。少しは落ち着け」
パッと襟から手を離すと、彼は翼の髪をぽんぽんと撫でる。
落ち着き払ったその笑みが年齢の差を表しているようで、酷くもどかしかった。
彼を相手にそんな考えを抱く事は馬鹿らしいと思っていても…抱かずにはいられない感情。
翼に負けず劣らず過保護な暁斗だが、放任すべきところをしっかりと理解している。
それが紅への真っ直ぐな信頼に思えて、どうしようもなく歯痒いのだ。
「紅が怪我でもしたら、殴るから」
「お前なぁ………ちょっとは彼女のお兄様を敬え」
「敬う…ね」
「………何だ、その呆れたような顔は。敬うに値しないとでも言いてぇのか?」
「さぁね」
確かに翼は呆れたような表情を浮かべていた。
だが、暁斗の言葉通りではない思いがそこにある。
「……尊敬してるに決まってる」
呟いた言葉が彼の耳に届く事はない。
何か言ったかと首を傾げる彼に、何でもないと首を振る。
そして、思い出したように踊り場を見上げた。
未だ会話は続いているようだが、何か大事に至っていると言うわけではないようだ。
ほっと安堵の息を漏らした、まさにその時。
女子の振り上げた手が、紅の頬に振り下ろされた。
ぐらりと揺れる身体を見て、頭で考える前に身体が動き出す。
「紅っ!!」
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06.07.20