夢追いのガーネット
Idle talk 09.5

翼たち飛葉中メンバーは、途中で風祭らと合流してミーティングルームへの道を歩いていた。
そんな中、まるで漫画のように角で誰かと出くわす。
違ったと言えばお約束のようにぶつかったりはせず、ひょいと避けた事くらいだろう。

「っと。ごめん」
「わぁ、格好いい!」

謝るわけでもない相手の言葉に翼は眉を寄せる。
そんなことなどお構い無しに、女子二人はきゃあきゃあと騒いだ。
そして、翼たちの名前や学校を尋ねる。
しつこく言い寄られるのも面倒だと判断した彼は「飛葉中の椎名翼」とだけ答えて早々に歩き出した。
他のメンバーもそれに倣って自身の名前を紡ぎ、彼に続く。













「椎名さんは彼女居るんですか?」
「居る」

いつの間にか隣に歩いていた風祭を押しのけ、ツインテールを揺らした女子がそこに居た。
名前は…さっき名乗っていたようにも思うが、彼は覚えていない。
翼の即答に彼女は「えー…残念」と笑った。

「どんな人なんですか?」

彼女が居ると答えたにも関わらず隣を歩き、その彼女について尋ねてくる。
翼からすれば鬱陶しい事この上なく、学校の女子に言うようにマシンガントークで追い払おうかと口を開いた。
だが、言葉を発する前に彼の脳裏に浮かぶ笑顔。

『大丈夫だよ。頑張る翼の背中を押したいからね』

何故か、この女子に冷たい言葉を掛けるのを躊躇われた。
翼は一旦口を閉ざし、そして改めて前を向いたまま答える。

「…人一倍努力家で、頑張ってる奴を放っておけないお人好し。だからこそ人に好かれるような、そんな可愛い奴だよ」

隣を歩くのが自分の嫌いなタイプだと言うことも忘れ、翼は軽く微笑んだ。
彼の目線は前を向いていて、その笑顔が女子…佐倉有希に向けられることはない。
彼女は翼の笑みに思わず言葉を失った。
同時に、その笑顔を向けられている彼女に対して、酷い嫉妬心が芽生える。
今ここにその彼女が居なくてよかった。心からそう思う。

「…何だか、凄い人なんですね」

そう言った声は震えていたかもしれない。
その笑顔を向けられたいだなんて、初めて思った。

でも、それが何を意味するのかはわからずに、彼女はただ彼が好みなのだと判断する。
そして、その数時間後に、彼女は一緒にマネージャーとして参加する紅に宣戦布告する事となった。

この時、彼女はまだ紅が「翼の彼女」なのだと言う事を知らない。

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06.07.20