003.気付いてほしくて
私の視界の中でそわそわと落ち着きない翔陽。
自分から言いたくはないけれど、気付いてほしいというあからさまなサイン。
気付いているのは私だけではないから、あの調子だとそのうちに誰かしらからのお叱りが飛んでくるかなぁ、と考える。
ちらり、と澤村さんに視線を向けると、彼の視線もまた、私に向けられていた。
―――頼む。
―――任されました。
無言のやり取りを一往復。
ひとまず作業の手を止めて、翔陽へと向き直る。
「翔陽」
「お、おう!」
「さっきのレシーブ、昨日より正面で受けられてたね」
「!!――だろっ!!」
ビュンッと近くまで飛んできた翔陽が興奮気味にさっきのレシーブについて語る。
よいしょ、と持ち上げたカゴは、すぐに彼の手によって奪われた。
あまりにも自然に行われた行動の間も彼の語りは止まらない。
常であれば、たとえ翔陽にでもマネージャーの仕事を手伝ってもらうことはないけれど。
ちらり、と澤村さんを見るけれど、肩をすくめて笑ってくれたので、どうやら許可は下りたようだ。
「10分休憩!!」
「「「―――ッス!!」」」
そんな声を聞きながら、翔陽と二人、横並びになって体育館を後にする。
周囲に誰もいないことを視線で確認し、半歩だけ翔陽との距離を詰めた。
「ねぇ、翔陽」
「ん?」
「さっきの、かっこよかったよ」
二人だけの内緒話みたいな小さな声だけれど。
隣の彼にはちゃんと届いたらしい。
「だろ!」
変わらない太陽の笑顔につられて、笑い声を一つ。
日向 翔陽/ 狐の嫁入り