092.窓辺の木漏れ日
「おー…やってるねぇ」
耳に馴染むバレーボールの音。
体育館からではなく、聞こえてくるその音源を見下ろし、小さく笑みを浮かべる。
「まったく…あのキャプテンを怒らせるなんて…我が弟ながら、よくやるわ」
そよそよと開け放たれた窓からの風が、彼女の柔らかい髪を躍らせる。
校舎脇に植えられた木の葉の合間から挿し込む日差しは、昼休みの瞼を重くしてくれた。
「頑張れ、翔陽。ずっと望んでいたものは、ここにあるよ」
環境に恵まれず、奥歯を噛み締めて頑張っていた小さな背中を知っている。
与えられたトスに浮かぶ、満面の笑顔を知っている。
「あ、姉ちゃん!!」
ふと顔を上げた日向がおーいと手を振った。
昼の練習に付き合っていた菅原も、その声につられるようにして顔を上げる。
「ありがとうございます、菅原先輩」
「おー、気にすんなって」
上からすみません、と告げれば、爽やかな笑顔が返ってくる。
うん、相変わらず癒しだな、この先輩は。
そんなことを考えながら、頑張って、と言い残して窓を離れた。
「しかし、こう見るとお前らよく似てるなー」
「よく言われます!本当の兄弟みたいだって。自慢の姉です!」
「はは!なんか、どっかで同じようなこと聞いた気がするわ。さて、やるか?」
「お願いします!」