088.二つの選択肢
目の前に二つの選択肢が転がっているとして。
そのどちらかを選ぶことしかできなかった時、人は何をもってそれを選択するのだろうか。
「ねぇ、セフィロス」
静かに声をかければ、返事もなく彼の視線が私を捉える。
どれほど離れていたとしても、小さな声だったとしても。
声の届く範囲であれば彼は必ず応えてくれる。
その事実が自惚れだとは、どうしても思えなかった。
だって、彼はとても素直な人だから。
こういう話をしても、周囲の誰からも同意を得ることはできなかったけれど。
「世界か、大切な人か。どちらかを選ばなければならないとしたら、あなたはどうする?」
正解が欲しいわけではない。
ただ、彼の答えが知りたかった。
「…愚問、だな」
そう言って、彼は小さく笑う。
それに対して、私は「そうね」と安堵した。
彼の中でも、私の中でも。
おそらくは、「大切な人」と考えた時、浮かぶものは一つだ。
そうしてその選択肢を前にした時、選べる道もまた、一つしかない。
「選ばなければいけない時が、来なければいい」
人として、残酷な決断になってしまう。
人はいつだって自分本位だけれど、これはきっと許されることではないのだろう。
それでも、たとえ許されなかったとしても。
「選べるはず―――ないわよね」
この手のぬくもりを知って。
この場所の安らぎを知って。
それを手放すことなんて―――できそうにない。
セフィロス / Crimson memory