079.視線の意味

「…店長、穴が開きそうです」
「そーか、大変だな。まぁ、視線で穴が開いたって話は聞いた事がないから大丈夫だろう」
「相手がそう言う念を使う人だったらアウトですよね。っていうか、あの視線だけで胃に穴が開きそうなんですが」
「いやいや。お前さんは案外図太いから大丈夫だと思うぞ」
「図太くないです!一般市民を捕まえて何を言ってるんですか」
「一般市民はゾルディック家に招かれて無傷で帰って来たりしないな」
「………偶然です。たまたま運が良かっただけです」
「ま、運も実力の内って事だ」

ケラケラと笑ってキッチンに戻っていく店長に、これ見よがしに溜め息を吐き出す。
その間も、変わらずに送られてくる視線。
熱視線、と言えるかもしれないけれど―――いや、無理だ。
穴が開くほど見つめては来るけれど、あの視線はどう見ても冷めている。
と言うか、眼差しに感情が籠っていない。
こんなにも見つめられているのに、まるで人形がこちらを向いているだけのような錯覚すら感じてしまう。
丁度、用意していたコーヒーが出来上がった。

「いい加減に、人を見つめるのはやめてください。おかわりなら声に出せばいいでしょう!」
「うん、おかわり」
「持ってきて注いでから言ったって遅いんです!どんだけ常識ないんですか、あなたは!」

ゾルディックの人ってみんなこうなの!?と言いたくなる。
不思議な所で常識がないと言うか…全てにおいて常識とは違う枠で生きていると言うか。
とにかく、私が今まで関わってきたどんな人とも一緒に出来ない人だった。




「…あのイルミにそう言う態度を取れるだけで普通じゃないぞー、お前さんは」
「だよなぁ…チキンっつー割には、肝が据わってるよ、あの子は。シルバのとこの倅に気に入られたらしいな」
「愚痴を聞く限り、キキョウにも気に入られたらしいな。本人は殺されそうになったって叫んでたが」
「キキョウに?…そりゃ、ご愁傷様だ」

店長が常連と一緒になってこんな事を話していたなんて、知らない。

イルミ=ゾルディック

Menu(お題順) Menu(ジャンル別)

12.03.03