076.手枷足枷
パチン、と留め具が鳴る。
ブレスレットの長さを確認し、よし、と頷いてからネックレスを手に取った。
鏡の前で首の後ろに手を回してそれをはめている時、不意にどちらも蔵馬からの贈り物だと思い出す。
手首と、首と。
緩やかに、彼の存在を感じさせる。
その考えが浸透しているからなのか、彼と合う時は、この二つを付けて行く事が多かった。
「ああ、だから…ね」
数日前、そっと手首を取った彼が、こんな事を言っていた。
―――次は足首を飾るものでも贈ろうかな。
―――なぁに、急に。
―――ううん、何でもないよ。
あの時は、特に気にしていなかったけれど。
ブレスレットを貰った時、彼は「君を繋ぐ鎖だ」と言った。
それを思い出せば―――この言葉の意味も、自ずと理解できてくる。
「そんなものがなくても、私は離れたりしないのに、ね」
そう言いながらも、彼に繋がれていると言う感覚が、安心感を抱かせる。
束縛されていると言うよりは、必要とされていると感じるのだ。
繋ぎとめたいと思ってくれていると言う事だから。
「さて…もうすぐ彼が来るわね」
早くしてしまわないと、と髪に櫛を通し、手早く準備を整える。
もう間もなく、インターホンが鳴るだろう。
南野 秀一 / 悠久に馳せる想い