075.鳥籠の中で

どうやら、私の扱いは鳥と同レベルらしいです。
…いや、ホント―――冗談抜きで。





一日休暇を下さいと言った私に、店長は「どの道そうなるだろうからな」と、あっさりOKを出した。
よし、逃げよう。
そう決意して、陽が昇る前に店の裏口からするりと身を滑らせる。

―――右よし、左よし。

まだ太陽も出ていない頃だと言うのに、行動が慎重になる。
バクバクと煩い心臓を抑え、朝の空気の中を歩き出した。
今、うっかり誰かに声をかけられたら―――それだけで、気絶できそうなくらいに、緊張してる。

「あれ、早いね」

その声を最後に、意識はブラックアウト。
この世界は左右だけじゃなくて、上まで確認しないといけない世界だなんて…誰も教えてくれなかった。





「それにしても…声をかけたら、突然倒れるから驚いたよ。調子でも悪いの?誰かに何かされた?」
「ええ、主に心臓の調子が…。ゾルディックの皆さんに付き合えるような強靭な心臓じゃないので、早々にお暇したいんですが」
「医者、呼ぶ?」
「(医者でどうにかできるならチキンなんて言葉は存在しないわ!!)…ところで、この檻…何ですか?」
「…鳥籠?」
「………随分と大きな鳥を飼う予定があるんですね。その中に私が入っている意味がよくわからないんですが」
「たぶん、そこがこの家の中で一番安全な場所なんだよね。とりあえず、事が落ち着くまでそこにいて」
「……………はい?」

意味が解らず、問い返す傍ら、聴覚が嫌な音を拾った。
ダダダダと何かが走る音。
それはどんどん近付いてきて、そして。

「あ、やっぱり来た」
「!?!?!?」

ドアが、吹っ飛んだ。
叫ぶ声すらなく驚く私の視界を、何かが走り抜けていく。
そうして、ドアと反対側の壁にも大きな穴が開いた。

「ちょっと行ってくるから、ゆっくりしてて」

イルミさんがそう言い残し、穴から外へと出ていく。
残された私は、鳥籠の中の椅子に座り込んだ。

「申し訳ございません。旦那様の飼い犬が脱走しまして…」
「すみません。謝罪とかいらないから、帰らせてください。今すぐに」
「イルミ様のお客様とお聞きしておりますので、それは承知しかねます」
「言葉は通じる筈なのに会話が全っ然成り立たないのっておかしくない?ここ、どこの世界なの!?」
「紅茶はミルクとレモン、どちらになさいますか?」
「ミルクでお願いします。―――じゃなくて!何で当たり前のように鳥籠の中で持て成されてるんですか、私!!」
「イルミ様より、くれぐれも丁寧、安全に持て成すよう言われておりますので」
「“安全に”って言わなきゃいけないような家に招く事が間違ってると思います!」

イルミ=ゾルディック

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12.02.10