070.嘘つきな小鳥

いい加減、見なかった事にするにしても、限度がある。
俺、疲れてんのかなぁ、と目をこすったのは二週間も前。
それから毎日毎日―――部活帰りの帰宅路ですれ違う、着物姿の少女。
腰に挿した刀は、見るからに銃刀法違反だと思うから、お知り合いにならずに済むように視線以外の関わりはない。
まるで幽霊のように校門のところで佇み、俺が通り過ぎて暫くしてから、その後を追うようにして歩き出す。
正直、気付かない方がどうかしているんだ。
ついでに―――つい三日ほど前からは、少女以外のモノまで見るようになった。

―――もう、限界だ。





「なぁ」

ぴたりと足を止め、そう声をかける。
一護に次ぐような、人間には不釣り合いな霊圧の主。
毎日毎日、彼を襲いにやってくる虚を片付けるのが、ルキアの任務となった。
別の任務があったはずなのに、寧ろそれが主になってしまっている。

「…なぁ」

男は、歩く様子を見せず、再び声を発した。
その背中を見つめ、誰に声をかけているのだろう、と思う。
もしかすると、彼の背中で見えない位置に、浮遊霊でもいるのだろうか。
ルキアは怪訝な表情のまま、早足で男を追い越す。
しかし、そこには何もいない。

「…何もおらぬではないか」
「お前だよ、お前」
「………?」

もう一度聞こえた声に、きょろきょろと周囲を見回す。
そして、彼を見上げたところで―――漸く、悟った。
誤魔化しようがないくらいに、しっかりと絡み合う視線。

「今どきの中学校ではストーカーでも流行ってんの?」
「わ、私が見えるのか!?」
「………お前、人に見えない類の特殊効果でもついてるわけ?」
「一護に次ぐ霊圧だと思ってはいたが…道理で虚が集まるはずだ」
「誰だよ、いちごって。随分と可愛い名前だな。つーか、れいあつって何だ」
「まさか、狭い町の中でそう何人も見える人間がいようとは…」
「何この子。会話のキャッチボールがまるで駄目なんだけど」

男が引き攣った表情を浮かべている事にも気づかず、ルキアはぶつぶつと何かを呟いている。
腕に自信はあるし、背中には竹刀もあるので大して警戒していない彼。

「よし。とりあえず…帰れ。ガキとは言え、女なんだから…こんな時間にうろつくなよ」
「が、ガキと言うな!私は貴様よりも遥かに…!」
「へぇ…因数分解とか、ボイル・シャルルの法則とかわかるわけ?」
「…は?……何の詠唱だ…?」
「…だろうな。大人しく帰れよ。…この場合、俺が送ってく羽目になるのか?ストーカーを?」
「だから、ガキ扱いするな!私は死神だ!」

半ば叫ぶようにそう言うと、彼の動きがぴたりと止まった。
一護よりも背が高い彼とルキアの身長差は大きい。
見上げるルキア、見下ろす彼。
彼は、にこりと微笑んだ。

「夢に夢見る時期だってのはわかるけどな―――死神とか、笑えない嘘はやめとけよ?」

全くもって、これっぽっちも通じていなかった。

朽木 ルキア

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12.02.03