069.夜の淵に佇んで
テラスから平原を見つめる。
間もなく、夜が終わろうと言う時間。
薄らと太陽の気配を感じさせる空に向かって、そっと息を吐き出す。
「随分、早起きね」
背中から聞こえた声には驚かなかった。
何となく、彼女が来るような気がしていたから。
「そうだね。目が覚めたんだ。…君も、早起きだよ」
「呼ばれているような気がしたから」
無視して眠ろうと思えば、それも出来ただろう。
しかし、彼女はそうしなかった。
来てほしいと願ったのは、僕自身なのか、それとも紋章なのか。
心の境界が曖昧になる。
静かに足を進めた彼女が、僕の傍らに立った。
同じ場所で、同じ世界を見つめる。
彼女と同じものを共有しているのだと思うと、この時間がとてつもなく大切なものだと感じた。
「夜が終わるわね」
「ああ、一日の始まりだ」
もしかすると、城のどこかでは誰かが起きているのかもしれない。
今、この場にいるのは二人だけ―――それがまるで、世界に二人きりのような錯覚を感じさせた。
時間が、ゆっくりと流れている。
どこも触れあっていないのに、確かに何かが繋がっていた。
1主 / 水面にたゆたう波紋