067.雨音ダンス

ザァザァと降る雨は、やむ気配を見せない。
雨樋から落ちた雨水が、パタパタと地面をたたく音をぼんやりと聞きながら、窓越しに曇り空を見る。
この所、雨が続いている。
梅雨にはまだ半年ほど早く、気温によっては、雨は雪に変わる。
身体の芯から冷える寒さなのに、雪になるほどではない事が多く、週間天気予報には雨マークが並ぶ。
お天気お兄さんによると、あと三日は続くらしい。

「別に嫌いって言うわけじゃないんだけどね…」

寧ろ、雨は好きだ。
そうでなければ、こんな風に何をするでもなく、何時間も雨音を聞き続けたりしない。
ただ…寂しいと感じる、だけ。

パタパタ、ザァザァ、コツン、コツン―――

「…ん?」

何となく聞いていた音に、違和感を覚える。
明らかに、雨音ではない音が加わった。
何の音だろう―――不思議に思って、椅子から立ち上がる。
窓の方から聞こえたからと、そちらに近付こうとした―――その時。

―――ガシャン!!!

窓ガラスが、割れた。





バタバタと足音をさせて階段を駆け下り、傘を差すのも忘れて玄関を飛び出す。
雨にぬれる事もいとわずにずかずかと足を進めた先に、彼はいた。

「何て事してくれるの!!行き成り窓ガラスをぶち抜くってどう言う事!?」
「テメーが気付かねぇからだろうが!」
「だからってぶち抜く、普通!?電話をしなさいよ、で・ん・わ!!文明の利器!!」
「………」
「……忘れてたわね」

はぁ、と深く溜め息を吐き出す。
何で、この男はこう言う不思議な所が足りないんだろう―――いくら考えても、答えは出ない。
怒っているのが馬鹿らしく思えてきて、小さく自嘲の笑みをこぼす。
鬱陶しく張り付く髪を手櫛で後ろへと掻き上げると、徐に動き出す彼。

「…ちょっと」
「風邪引くぞ。ただでさえ弱いくせに…傘くらい差して来い」
「頭に血が上ってたの。ガラスって意外と高いのよ」
「…払う」
「うん。あと、スクアーロも傘を差さずに来てるから、このコートもびしょ濡れだけど」

頭からすっぽりかぶせられた黒いコートは、水気を含んでいて、普段よりも重い。
直接当たる雨はなくなるけれど、コートに染み込んだ雨の冷たさで身体が冷えそうだ。

「…まぁ………借りとくわ」
「…何か言いたそうな間だな」
「気にしないで」

その優しさが嬉しいから、なんて、柄じゃないから口には出さない。
赤くなりそうだった頬を隠すように、さりげなく視線を逸らす。

「行くぞ」
「どこに?」
「…お前が風邪を引かねぇ所だ」
「家に入ったらすむんだけど」
「嫌なら来るな」
「行かなくていいの?」
「………」
「………」

素直じゃないのはお互い様だ。
無言のやり取り、折れるのは、その時によって違う。

「…行くわ」

今回は、彼女が折れた。
理由は至ってシンプル―――雨に感じていた寂しさを消してくれたから。

スペルビ・スクアーロ / 山本くんのお姉さんシリーズ

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12.01.27