060.恋歌音色

「キャプテン、何してんだ?」

甲板に出るわけでもなく、ハッチを軽く開けて壁に肩を預けて佇むロー。
それに気付いた仲間が声をかけると、彼は目線でそれを制した。
沈黙する事で気付く。
そう広くはない甲板から、歌声が聞こえていた。

「…意外と上手いんだな」

彼はそう言うと、中へと戻っていく。
それを見送るわけでもなく、ローは未だ、そこに立ったままだ。

「…“海色の覇気”…か」

ローの位置からでも見えるほどに、海面が大きく波打っている。
その原因は、彼女の歌声に誘われてやってきた海の生物だ。
自らが住処とする海の色を持つ彼女の声に乗る、微かな覇気。
それに誘われ、多くの生き物たちが船の周りに集まってきていた。

かく言うローもまた、その一人だ。
海に嫌われた悪魔の実の能力者であるかれだからこそ、対極に位置するその声に惹き付けられ、その場から動けないでいる。
彼女の覇気に中てられたのではなく、説明できない何かに、行動する意思を奪われていた。
人はこれを、魅了された、と言うのかもしれない。

「―――、――」

小さく、囁くように紡がれる歌は、優しい恋のもの。
丁度彼女と同じ年頃の少女の視点で語られる優しい歌詞。
歌声が止まるその時まで―――ローは、静かに目を閉じた。



「…あれ、ローさん?って……ちょ、顔色悪いよ!?」
「………」
「え、もしかして私の所為!?覇気抑えてたつもりなんだけど、途中から乗って来ちゃって加減を忘れてたし!」
「…(道理で…)」
「ローさーん!!ごめーん!!」

トラファルガー・ロー / Black Cat

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12.01.16