059.糸を紡いで編んで繋げて

―――縁があれば、また。

ドラマの女優が、そう呟いて背中を向ける。
別に興味があったわけでもなく、ただチャンネルを回していたら見つけたドラマ。
それなりに人気のあるドラマだと、クラスメイトが噂していた声が脳裏を過る。

「…縁があれば、か」

このドラマの原作を読んだから、先の結末を知っている。
縁があればと別れた女性が、紆余曲折の末に再会すると言う、ある意味では定番のストーリー。
ドラマや本、いわゆる、二次元の世界だから起こり得る事。
現実にそんな縁が巡ってくるなんて―――とても低い確率だ。

「…現実はやっぱり、辛うじて繋がった縁を、どう自分のものにするかが大事よね」

少しでも力を加えてしまえば途切れてしまいそうなか細い糸を縒って縒って―――漸く、手に入るものだ。
ほんの少しのチャンスを、どう生かすか。
それが、相手との縁を繋ぐ分かれ目だと思う。
これは、彼女の持論だ。

「ドラマ?珍しいな」
「おかえりー。温まった?」

濡れ髪を拭うタオルを動かしながら、陸がリビングに帰ってくる。
今日は汗を掻いた上に、突然の通り雨で上から下までずぶ濡れだった彼を、有無を言わさず浴室に押し込んだのは数分前。
所要時間は短くて、男の子なんだなぁと思う。

「風呂、ありがと」
「どういたしまして」

彼と入れ替わるように、キッチンへと向かって用意していたマグカップにお湯を注ぐ。
ミルクティの甘い香りがキッチンに漂った。

「はい、どうぞ」

陸の隣に座ってから彼にミルクティを差し出すと、ありがとう、と礼を告げられる。

「面白い?」
「らしいよ。興味ないけど」

そう答えて、チャンネルを変える。
丁度よく天気予報が流れていて、明日の天気が晴れだと知った。

「陸は運命とか縁とか…信じる?」
「別に。そう言うのを待つより…動く方が好きだな」
「…うん。そんな感じ」

クスリと笑うと、空いていた彼の手がリモコンを持つ彼女の手を包んだ。

「だから…ありがとう。ちゃんと、繋いでくれて」
「…お互い様、かな」

顔を見合わせて、秘密事を共有するかのように、クスクスと笑った。

甲斐谷 陸 / 向日葵

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12.01.12