053.贖罪の花

一抱えもある花束は、お約束のバラの花束―――ではなかった。
色とりどりの様々な花が品よく集められ、ラッピングされたそれからは、ほのかに甘い香りがする。

―――花束くらいで懐柔されないんだからね!

言いたい事は、山ほどあったはずだ。
けれど、彼がどんな顔をして、花屋でこれを注文したのか―――それを想像すれば、吐き出すべき言葉は別にある気がした。

「…綺麗ね」

ツンとした言葉はどこかへと消え、素直さが顔を出す。
花束に口元を近付けると、より香りが増した。

「…悪かったな」

何度、こうして彼からの謝罪を聞けばいいのだろうか。
そう思いながらも、心は常に彼の方を向いていて。
自分の感情以上に、本能は素直だった。

「…これに免じて、許してあげる」
「…そうか」
「次はないから」

少しだけじろっと睨むような視線を向けると、やや引いた彼が「おう」と小さく頷いた。
見た目がこんなに怖いのに、力で言う事を聞かせるのだって簡単なのに。
視線一つで黙ってくれる彼が、やっぱり好きなのだと改めて実感する。

「そろそろ家の中に入れよ」
「もう?」
「………チッ」

盛大な舌打ちだ、と思いながらも、口にはしない。
じっと、彼の言葉を待つように見つめる。
見つめる、見つめる―――溜め息が聞こえたところで、勝ちを悟った。

「上着、持って来い」
「うん!これを花瓶に挿してくるから―――」
「わかったわかった。…待っててやるから、さっさと行け」

普段は怒鳴り散らしている彼が、穏やかに話す。
それだけで自分が特別だと認識できるから、この時間が好きだ。
彼に近付き、待っててね、と言う気持ちを込めて、背伸びをした。
そっと触れるだけのキスを頬に。
そして、逃げるように家の中へと駆けこむ。
熱を持つ頬を隠すようにして、花瓶を探した。

スペルビ・スクアーロ / 山本くんのお姉さんシリーズ

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