051.星空模様
同じ夜空なのに、まるで別の物みたいだと思った。
白い息をほぅ、と吐き出しながら、夜空を見上げる。
現代で生きていた時、何度も星空を見たけれど、これほどに多くの星を見た事はなかった。
彼女らが生きた時代は、汚染された空気の層により、星空が隠されていたから。
世界のどこかには、いま彼女が見ているような星空を持つ国があったのかもしれないけれど―――彼女の知る星空は、多くの光を失った星空だけだった。
「何か変わった事でもあるか?」
縁側で飽く事無く空を見上げる彼女に気付き、政宗が問う。
就寝前の、迎え酒を飲んでいた彼の手には、空になった杯があった。
「いいえ、いつもと変わらず、良い星空です」
「…お前の時代はどうなんだ?」
「これほどに多くの星は見えません。だから、この星空でも十分新鮮なんです」
「そうか。…星空もいいが、あまり身体を冷やすな」
そう言った彼が、部屋の中から引っ張ってきた上着を彼女の肩へと羽織らせる。
政宗様が寒いのでは、と見上げる彼女に口角を持ち上げ、その身体を膝の上に抱き寄せた。
途端に、頬を赤く染める彼女。
「もう…背中が冷えますよ」
「そう思うなら、早く褥に入ろうぜ?」
「………そうですね。でも、もう少しだけ…駄目、ですか?」
眠ってしまうのが勿体ないような、美しい空がそこにある。
いつもと変わらないはずなのに、何度も見ているはずなのに―――何度見ても、やはり美しいと感じた。
彼女の返事に苦笑する政宗だが、何となくそう来ると予測していたのかもしれない。
もう少しな、と念を押し、彼女の肩に顎を乗せて、同じ星空を見る。
背中から包まれて見上げた星空は、昨日とは違っているように感じた。
「政宗様と一緒に見る星空は、いつもより綺麗ですね」
「…あんまりそう言う事を言うと、無理やり褥に引きずり込むぞ」
「…もう少しだけ、と言う約束です」
「ったく…」
呆れたように、けれど優しく。
彼は笑い、そして彼女を強く抱きしめた。
伊達 政宗 / 廻れ、