048.視線が結ぶ三角
動かない白哉様の気配に気付き、そっと足音を忍ばせる。
もちろん、それだけでは足りないから、可能な限り気配を殺して。
隠れたかったわけではない。
ただ、向かう先がそこだったと言うだけ。
けれど、今この時間でなければならないわけではなかった。
「―――緋真」
聞こえたのが不思議なくらい、吐息のような小さな声。
その声に含まれた優しい感情に、全身の血が凍りつく感覚を抱いた。
見なければよかった―――そう思い、ギュッと拳を握りしめる。
呼吸すら奪われるような感覚。
この道を選んだのは自分だと言うのに、実に愚かだ。
愚かだけれど…この感情を失いたいとは思わない。
これは、私が受けるべき戒めなのだ。
決して振り向く事はない白哉様を見つめる。
白哉様の肩越しに見えた緋真様の遺影が、まるで私を見つめているようだった。
朽木 白哉 / 睡蓮