046.雨宿り渋滞
生徒用昇降口に、雨宿りの渋滞が出来ていた。
天気予報を裏切った、突然の夕立。
いつ止むともわからないどんよりとした雨雲を見上げていた生徒は、どうしようかと言った表情だ。
空を見上げて舌打ちした生徒が一人、覚悟を決めて雨の中を走り出す。
屋根の下を出た途端に、彼の上に雨が降り注いだ。
すっかり濡れ鼠になった彼は、そこで立ち止まることなく校門へと走って行った。
「…どうしようかな」
ここで待っていて、この雨は止むだろうか。
昇降口にやってきたツナもまた、他の生徒と同じように空を見上げた。
折り畳み傘は、三日前の雨の後、干したままカバンに戻すのを忘れていた。
「天気予報が外れると困るよなー」
「山本も忘れたの?」
「おう。すっかり。この雨の所為で部活も休みだしな」
そんな会話をしながら、濡れるしかないか、と覚悟を決めかけたところで、ポケットの携帯が震える。
慌てて取り出したそこには、彼女からの着信が表示されていた。
「もしもし?」
『あ、綱吉?まだ学校?』
「うん。これから帰ろうと思ったんだけど…」
『そう、良かったわ。入れ違いにならなくて』
クスリと笑った彼女の向こうから、雨音が聞こえる。
あれ?と思うのと同時に、見覚えのある傘を差した人が、こちらに向かって歩いてくるのが見えた。
「買い物ついでに寄って正解だったわね」
携帯を切り、カバンに戻しながらにこりと笑う彼女。
そして、隣の山本と仲良く挨拶をする。
他の生徒が、不思議そうに、そして興味深そうに視線を向けてくるのが見えた。
「山本くんも傘がないの?」
「そうなんスよ」
「じゃあ、これを使ったら?」
貸してあげていい?と尋ねるのは、彼女の手にある畳まれた傘がツナのものだから。
そうなるような気がしていたから、うん、と頷いてその手から傘を預かる。
「使ってよ。返すのはいつでもいいから」
「いいのか?」
「もちろん」
そう答え、屋根を抜け出して彼女が差している傘の下に入る。
彼女の手から傘の取っ手を受け取り、その細い肩が濡れてしまわないよう角度を調整した。
「じゃあ、また明日」
「おう!ありがとな!」
元気な声に見送られ、二人で揃って歩き出す。
大きいと思っていた傘も二人で使うには少し狭い。
けれど、肩を寄せ合って歩く時間は悪くなかった。
沢田 綱吉 / 空色トパーズ