041.空を掴む掌
庭の草木に水を上げていると、縁側で寛いでいたルキアが動き出した事に気付いた。
空を見上げて、限界まで手を伸ばすその様子に、思わず手を止めて見入る。
視線に気付いたのか、ハッとした表情を作ったルキアが、すごすごと腕を引っ込めた。
「どうしたの?」
「いえ…」
一度は誤魔化そうと首を振る。
しかし、何かの心境の変化で、聞いてほしくなったらしい。
ゆっくりと、ルキアは唇を開いた。
「空が…掴めそうなほどに低いと思ったので…」
届くはずがないのに、と肩を落とす横顔が、手の届かないものに焦がれているように見えた。
事実、ルキアはずっと…手を伸ばす先を見失っている。
いや、伸ばしていいのかわからない、と言うべきだろうか。
「…同じ、ね」
彼女自身もまた、そうなのだ。
振りほどかれる事を恐れて、この手を伸ばせずにいる。
柄杓を桶に戻し、ルキアの元へと歩く彼女。
ぼんやりと熱に浮かされたように空に向かって伸ばされたルキアの手をそっと握り締めた。
「空には届かなくても、届くものもある」
それが自分の支えになるのだと―――ルキアに伝わればいいと思った。
瞬きをしたルキアは、やがて頬を染めて頷く。
「…はい、姉様」
彼女の心は、確かにルキアに届いていた。
朽木 ルキア / 睡蓮