040.甘いお菓子をあげましょう

「何や、また菓子食っとるんか、あいつは。菓子やるっちゅーたら知らん奴にでも着いて行きそうやなぁ」

ぽつりと呟いた声に、何気なく部員たちが視線を合わせる。
誰の頭にも、その光景がありありと想像できた。
その真偽を問うかのように、視線は自然と鷹へと集まっていく。
それに気付いたのか、ヘルメットを外した彼は向こうのベンチでお菓子を啄みながら花梨と話をしている彼女を一瞥した。

「25回…だったかな」
「…何がや?」
「知らない奴にそうやって声をかけられた回数」
「……………」

沈黙。
学生は、不審者に気を付けましょう、と言われて育つ。
だが、よほど治安の悪い場所やそう言う所に行かなければ、そんな状況には遭わないもの。
25と言う回数が多いか少ないかと問われれば、間違いなく多いと答えるだろう。

「何か、他校生とかにも…結構知れてるらしいから」
「それは…」
「うん」

そう言う事、と頷く鷹は、特に不満を感じていないらしい。
気にしていないと言った方が正しいのかもしれない。
彼女が貰うお菓子の4割は、男子学生の淡い期待を載せた賄賂だ。
ちなみに5割は先輩女子学生からで、反応が可愛いと好評だ。
残りはそれ以外。

「それにしても…意外だな。鷹が思ったより冷静だ」
「あぁ、それは当然だよ」

知った顔で笑顔を見せる大和を、鷹は止めなかった。
自分で説明する必要はないと思ったのか、興味が薄れたのか。
彼の視線は既に、仲間の元にはない。

「お菓子で釣るような相手は、彼女の中でそれ以上に成り得ないからね」

なるほど、と納得するメンバーたち。
アメフト部の人間とは、基本的に仲が良い。
寧ろ可愛がられていると言った方が良いだろうか。
彼女自身も…動物のような言い方かもしれないが、懐いている。
そこが、他との違いなのだろう。

「それにしても…危なないんか?」
「大丈夫!」

な、鷹。
同意を求める大和に、鷹が頷く。

「子どもの頃からアレだから…心配した上の兄が鍛えたらしい」
「彼女のお兄さんは空手道場の師範代だからね」

彼女に三人の兄がいる事は知っていたけれど、空手道場の師範代だとは知らなかった。
他の兄も、それなりに強いらしい。
それであの身体能力か―――何となく、納得できてしまう。

メンバーたちの視線の意味には気付いていないであろう彼女は、その視線にだけは気付き、顔を上げる。
そして、呑気な笑顔でひらりと手を振った。

本庄 鷹 / チューリップ

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11.11.17