038.せめて隣に居る間

「…本当に、大丈夫なのよね?」

再三、確かめるように問う彼女に強く頷く。
安心させるように微笑んだつもりだけれど、彼女の表情は晴れない。
仕方ないか、と苦笑しつつ、彼女を自室へと促す。

「おやすみ。明日は久し振りにゆっくりできるから、早起きしなくてもいいよ?」
「…そうね。寝ていられたら、そうさせてもらうわ」

おやすみなさい、と言い残し、彼女は名残惜しげにゆっくりと時間をかけ、扉を閉めた。
足音を小さく、彼女の自室に背を向けて歩き出す。
そうして自分の部屋に辿り着き、扉を閉めたところで、ずるり、とそれを背にして床に座り込んだ。
今まで溜め込んでいた熱い吐息を吐き出す。

「坊ちゃん」
「…ごめん、グレミオ」

既に部屋の中にいたグレミオの手には、厚みのある湯呑が握られている。
その中には、鎮痛効果を含んだ薬湯が入っているのだろう。
彼がグレミオに頼み、リュウカンから貰ってきてもらったもの。

「まったく…強がりですね、坊ちゃんは」

一息にそれを飲み干す彼を見て、グレミオが困ったように溜め息を吐く。

「彼女、気付いていますよ」
「…だろうね。コイツがいるし」

そう言って彼がひらりと手を振る。
ソウル・イーターは宿主の意思など関係なく、彼女と感情を共有する。
尤も、これがなかったとしても、彼女は気付いていたかもしれないけれど。

「でも、強がりだとしても…せめて、隣にいる時は…ね」

つまらない見栄かもしれないけれど。
せめて隣にいる時は、強くありたいと思うのだ、大切に思う女性だからこそ。
口直しのお茶を飲みながら笑う彼に、グレミオもつられた。

「リュウカン先生によると、明日にはその熱も引くようです。これで、安心ですね」
「うん。ありがとう」
「いいえ。…強くなりましたね、坊ちゃんは」

心の底からそう思ったからこそ零れ落ちた言葉に、まだまだだよ、と彼は笑った。

1主 / 水面にたゆたう波紋

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