036.思い出すのは君の怒った顔ばかり
「だ、か、ら!何でいつもいつも勝手に侵入するの!!」
リビングに入る前に気付けたなら、そのまま回れ右をしてホテルかどこかへ逃げただろう。
けれど、相手はプロの殺し屋で。
当然の事ながら、気配の消し方と言ったら目の前にいてもそこにいないように感じる事すらあるほどだ。
「連絡しておいたけど、着信拒否になってるよね」
「拒否されてる時点で察して!?私は会いたくないの!!」
寧ろ、関わりを持つのもごめんだ。
バンッと勢いよくバッグを床にたたきつける。
中から嫌な音がしたけれど、今は自分のストレスを発散する方が先だ。
目の前で飄々と雑誌を読んでいるこの男が消えない限り、ほんの少しも発散できないけれど。
「前に解ったでしょう!?私は三流の殺し屋なの!どこをどう叩こうと、あなたが興味を持つような何かは出てこないのよ!」
「うん。だろうね。俺の気配が読めなくて、仕事大丈夫?」
「アンタに心配されたくない!!」
ぜー、はー、と肩で息をする。
駄目だ、この人。
何を言っても意味がない。
こう言う相手は、さっさと用件を済ませて帰らせるのが一番だ。
そう割り切り、要件を問う。
「ちょっと思ったんだけどさ」
「…何」
「君の事を思い出す時…怒ってる顔ばっかりなんだよね」
誰の所為だ!!!
本能のままにナイフを取り出したい衝動を何とか抑え込む。
取り出したナイフで相手をどうこう出来る筈もなく、逆に自分の身が危険になるからだ。
「で…何が言いたいの?」
「別の表情、できないの?」
血管がブチ切れるかと思った。
イルミ=ゾルディック / ラッキー・ガール