029.写真の中のふたり

彼女が手帳を開き、何かを書き込んでいると、その手元からひらりと一枚の写真が落ちた。
落ちたよ、とそれを拾い上げるセナ。
何気なく視線を落としたその写真に写っていたものに、彼は驚いた。
隣にいたモン太も彼の手元を覗き込み―――同じような反応を示す。

「珍しいなー。鷹が笑ってる」
「…笑うんだね、彼」

後ろから首に抱き付くようにしている彼女が満面の笑みなのはわかる。
彼女はいつだって感情豊かで、そして彼が傍にいる時は特に笑顔でいる時が多いから。
そんな彼女に釣られるように、少し困ったような笑みを浮かべている鷹。
驚くほど、素晴らしいタイミングで撮られた写真は、素人が撮ったとは思えない出来栄えだ。

「あ、それね。街中で撮ってもらったの。鷹が中々笑ってくれなくてさー」
「街中で?」
「撮ってもらった?」
「うん。この雑誌の人。この間、家に届いたの」

何処からともなく彼女が取り出したのは、若者向けのファッション雑誌だ。
ファッションだけではなく、街中のカップルやおすすめデートスポットなど、若者にスポットを当てた内容になっている。

「…この雑誌に載ったの!?」
「うん。冗談かと思ってたし、別にこの写真だけでも嬉しかったから忘れてたんだけど」

雑誌が送られてきて思い出した、と答えた彼女が、ペラペラとページを捲る。
そして、カップル特集のコーナーを開いた。

「………笑ってる」
「………笑ってるな」
「どうも、声をかけられる前に撮られてた写真が採用されたみたい。撮りますよって言われてから笑えるほど器用じゃないもんね」

雑誌の一角を大きく占める二人は、少し遠い位置から撮られた写真のようだった。
カメラに気付いた様子もなく、自然な笑顔で歩いている二人。
彼らの人となりを知っているからだろうか。
コーナーに写っているどのカップルよりも自然で、素直に良い写真だと思えるものだった。

「でも、嫌じゃないんだね」
「何で?」
「だって…人に見せるのとか、嫌がりそうな気がして」

セナの控えめな言葉に、あぁ、と頷く彼女。

「寧ろ、自慢できるかな?鷹にこんな表情をさせられるのは私だけだから。絶対、誰も見た事ないよ。そう考えるとちょっと勿体ない気もするけど、私だけが知ってる表情…一つくらいなら、自慢になるならいいかなって」

本庄 鷹 / チューリップ

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11.10.28