027.忘れ物を届けて
「最近は落ち着いていますし、大丈夫かとは思いますが…お気をつけて」
「それは、お前の方だろ?」
北への偵察に向かう兵を率いる事になった彼女。
準備を整えた虎吉の傍らで、心配そうに政宗を見る彼女の状況は、まさに逆の立場だと言える。
心配される側が心配してどうする、と苦笑し、一つに束ねられた彼女の髪を撫でた。
「気をつけろよ」
「はい」
頷き、虎吉に跨ろうと鐙に足をかけようとする。
しかし、鞍に手をかけたところで、あぁ、と引き止める様な呟きが聞こえた。
何だろう、と振り向くのと同時に、身体を囲うように左右に伸びてくる腕。
政宗はとん、と虎吉に両腕をつき、狭い空間に彼女を閉じ込めた。
「政宗様?」
不思議そうに見上げた彼女だが、次の瞬間にはその続きの言葉を失った。
突如やってきた、掠めるなんてものではない、濃厚な口付けに息を弾ませる。
唇が離れ、見上げた彼の独眼は楽しげに細められていた。
「忘れもんだ。行ってらっしゃいのKissが決まりなんだろ?」
「彼女ですね!?」
即座に親友の楽しげな満面の笑みが脳裏に浮かんだ。
決まりだなんて、どの口がそれを言うか!と思うけれど、彼女は素でそれを実行している気がする。
「決まりじゃありません!」
「だろうな」
フッと口角を持ち上げて笑い、彼は両腕を解放した。
「顔が赤いぜ?」
「…すぐに治ります。北は寒いですから」
もう、と口を尖らせてから、思い出したように虎吉の背に跨った。
高くなった視界で兵たちの様子を確かめる。
「では、行ってまいります」
「おう」
火照る頬を隠すように視線を逸らし、虎吉の腹を蹴った。
伊達 政宗 / 廻れ、