025.涙の作用
「ど…どうした!?」
何があったんだ、と狼狽えるシャンクス。
彼の目の前には、ボロボロと大粒の涙を零す彼女がいた。
調節が上手くいかないのか、頭の上に生えた黒耳。
いつもは元気なそれが、今日ばかりはしゅんと垂れている。
「シャン~…」
ふぇ、と眉を顰めた彼女は、縋るでもなくただ涙を流し続けていた。
理由がわからなければどうしようもないけれど、今すべき事はこの涙を止める事だと判断する。
と言うより、身体が勝手に動いていた。
「落ち着け。…どうしたんだ?」
「ぅ~…」
唸るだけで何も言えない彼女を、気長に宥めるシャンクス。
耐えるようにきゅっと眉を寄せ、目を閉ざして涙を流すその様子が、いつもの快活な彼女とはまた別の印象を与える。
平たく言おうが丸く言おうが同じだが…とにかく、大人びたその表情が、昼間ではなく夜の彼女を思い出させた。
そんな場合じゃないとわかっているのに、心なしか動悸が逸る。
引き寄せられるように彼女との距離を縮め―――かけたところで、彼女が「あ」と呟いてパチッと大きな目を開いた。
ぱちぱちっと何度か瞬きをして、その次に明るい笑顔を浮かべる。
「取れた!!」
「取れ…た?」
「うん!目にゴミが入って、すごく痛かったの!」
取れた、よかった。
満面の笑顔で喜ぶ彼女に、「それが原因かよ!」と心中で脱力する。
原因が、解決できない何かじゃなかった事は喜ばしい。
だが、とりあえず。
「なぁ」
「うん?」
「ゴミが取れてよかったな」
「うん!すっきりした!」
「じゃあ、とりあえずキスさせてくれ」
え?と言う声は唇の中へと吸い込まれた。
キスを終えて、どうしたの?と首を傾げる彼女を無言で抱きしめ、その背中で深い溜め息を零す。
涙にそそられた、なんて言えない。
シャンクス / Black Cat