018.正反対なふたり
「何を見てるの?」
楽しそうだね、と声をかけられ、驚くわけでもなく顔をそちらに向けた。
隣に座ったアルバロが、ん?と首を傾げる。
「…わかってるくせに」
私がこの場所で見るものがあるとすれば、恐らく一つだ。
一つ、いや、一組と言うべきか。
「まぁね」
二人の目線の先で、細々と何かを言い合うエストとルル。
片方は迷惑そうに眉を顰めて早足で、もう片方は楽しげな笑顔を浮かべて小走りで。
少なくとも、恋人同士の楽しい語らいのひと時ではない。
「本当に、正反対な二人だよね」
「本当に、正反対な二人だなぁと思って」
ぽつりと呟いた声が、重なった。
3秒間の沈黙、後、見つめ合う。
どちらともなく、口角を持ち上げた。
「君とルルちゃんも、正反対だよね。君とエストくんはよく似ているから」
「………」
「どうかした?」
「いいえ、何でかしら、と思っただけ」
何で、彼だったんだろう。
確かに、自分とエストは似ている。
それならば、自分が惹かれる相手は…ルルのように、明るくて活発で―――ルルに似た人物の男子生徒、と考えた時、浮かんだ人物に首を振った。
いや、無理。あれは無理。私には無理。
今日も今日とて、どこかでスクープを追いかけているであろう少年を頭から追い出した。
「私、あなたはあの子に惹かれると思ったわ。あらゆる意味で非日常を日常的に招き込む彼女に」
「嫉妬?」
「純粋な疑問」
「まぁ、見ている分には飽きないよね」
彼女が来てからは、退屈している暇がなくなった、と彼は笑う。
「君は理解を求めて、彼は理想を求めた。そのあたりの違いかな」
そうかもしれない、と納得した。
エストは闇とは反対の光を求め、私は闇を知る闇を求めた。
その結果が、今に繋がっている。
あぁ、もう!
そんな声が聞こえ、ふと視線を戻す。
ぶっきらぼうにルルの手を引くエストが見えた。
耳まで赤くしたエストと、頬を赤くして嬉しそうなルル。
幸せそうな二人に、思わず笑みが浮かぶ。
「幸せそうだね」
「ええ、本当にね」
「…俺は、君の事を言ったんだけど?」
てっきり二人の事だと思って深く頷いたのに、苦笑交じりの答えが返って来た。
隣の彼に視線を向け、それから小さく笑う。
「そうね。…幸せ、ね」
ローブの影でそっと、彼の指を握った。
アルバロ・ガレイ / Tone of time