017.差し出された傘
「こっち」
いかつい連中から追いかけられながら、岩鷲を探す途中。
グイッと腕を引かれ、狭い路地へと引きずり込まれる。
敵か!?と警戒するも、腕を引いて走る背中が女だと気付き、思わず刀を手放した。
「おい、アンタ…」
「いいから。十一番隊は血の気が多いから、相手をするのは大変でしょ」
体力が持たなくなるよ、と告げ、彼女は走る。
やがて、静かな通路へと出た彼女は、ゆっくりと足を止めた。
「このまま走れば、お仲間と同じ道に出られるから」
「アンタ、何で俺を助けてくれたんだ?」
走っている間、ずっと考えていた疑問。
問いかけると、彼女は漸く振り向いた。
短い黒髪がふわりと揺れる。
「…“ありがとう”って言いたかったから」
そう言って、彼女は姿を消した。
訳わかんねぇ、と呟き、やがて走り出す一護。
数歩走った所で、不意に、その脳裏に過去の記憶が甦った。
「アイツ、あん時の…」
振り向いた先に、彼女の姿はない。
無言で足を止めていた彼は、小さく口角を持ち上げた。
「…寂しくなくなって、良かったな」
その呟きを拾った本人が、うん、と頷いた事など、知る由もない。
「雨、嫌いなのか?」
「ううん、寂しいだけ」
「…使えよ」
「いいよ、君が濡れちゃうから」
「俺は男だから大丈夫だ」
「それに…私には必要ないの」
「………でも、濡れたら寒いだろ。寒いから、寂しいと思うんだ」
「…そう、なのかな…」
「ああ。だから、それは使え。…じゃあな」
「あ―――… 」
黒崎 一護