015.メールの文面
「これが文章…なのか?」
小さな画面を食い入るように見つめる彼に、声を殺して苦笑する。
携帯の存在を見慣れたらしい彼に、次は、とメールを見せてみた。
もちろん、当たり障りのない内容のものだけだが。
「今でいう文ですね。これは彼女から届いたもので…リアルタイム…じゃなくて、えっと…瞬きの間に届きます」
多少は横文字を知っている彼だが、その全てを知っているわけではない。
普段使い慣れている言葉は、言い換えようと思うと意外と難しかったりするのだ。
「…これも文字なのか?」
「あぁ、それは…絵文字と言います。絵で感情を表現するんです」
「…となると、これは…」
「…すみません、彼女からのメールには、時々意味の繋がらない絵文字が入りますから…」
あまり深くは考えないように、と言う言葉は聞こえていないようだ。
彼の横から小さな画面を指差し、丁寧に教えていく。
「こちらは顔文字と言うんです。顔の表情に似せた記号を配置して使います」
「これはどう言う表情なんだ?」
「………クマ、ですね」
意味は…何だろう。
私自身はあまり絵文字や顔文字を使わないから…説明しろと言われると、難しい。
答えかねた私を見て、彼は携帯を畳んで私に返してくれる。
そして、「アイツの文章には脈絡がねぇんだな」と笑った。
「まったくもって、その通りです。意味が解らないものもよくあるんですけれど…メールは、そう言う物なので」
「意味を必要としないのか?」
「恋文のようなものですよ。思いついた時に、思うままに書き連ねるのも、使い方の一つなんです」
「…お前らの時代は興味深いな、まったく…」
「政宗様や、元親さんはすぐに馴染みそうな気がしますよ」
「そうか?」
「ええ。氷景や佐助も馴染むのは早いでしょうね。逆に、幸村様はいつまでも苦労しそうです」
クスクスと笑う。
彼らが現代に来るなんて、まるで夢物語だ。
けれど…そうしてやってきた自分がいるから、その可能性は否定できるものではない。
いつか、を想像するのは、少し楽しかった。
伊達 政宗 / 廻れ、