011.友達演技
「それにしても…あんたも随分と無茶な事をやろうとしたわね…」
「無茶、ですか?」
「流川に出来ると思うの?」
「…出来るって?」
「友達演技。あんなに自分に正直な奴が?」
無理無理、と彩子が手を振る。
そうかもしれないと頷きかけたのは、日頃の彼の行動を知っているから。
「案外、大丈夫みたいですよ。だって…今まで、気付いたのは彩子先輩だけですし」
「あたしは流川が女の子に優しい奴じゃないって知ってるからねー…あんたに優しく姿を見れば、すぐに分かったわ」
「と言う事は、皆は彼の性格をそこまで意識していないって事ですよね。なら、これからも大丈夫ですよ」
きっと。
そう言って、パンッと洗濯物を伸ばす彼女。
その横顔がどこか切なさを帯びている事に気付く。
「あんたは、これでいいの?」
「え?」
「流川は何とも思ってない女の子と付き合うような面倒はしない。それは、あんたが一番よくわかってるんでしょ」
「…それは、告白されて断るのが面倒だったからで」
「それなら―――」
隠していたら意味がないでしょう?
言いかけた言葉を飲み込み、続きを待つ彼女に向けて、誤魔化すように笑う。
この先は自分が関わるべき問題ではないと、理解しているからだ。
「後悔はしちゃ駄目よ」
そう言うと、彩子は籠を抱えて先に体育館へと向かう。
最後の一枚を紐へと掛け、ぐぐっと身体を伸ばした。
「後悔…か」
後悔するとしたら、どの自分に対してだろうか。
いつまでもこの関係を変えられない自分?
この関係を続けてきた自分?
自ら都合のいい女になろうとした自分?
それとも―――
考えていても埒が明かないと頭を振り、彩子を追って体育館へと向かった。
彩子 / 君と歩いた軌跡