008.眩しい笑顔
まずクラスに知れ渡ってしまった不名誉な誤解の関係は、いつの間にか学年、学校へとその規模を広げる。
帝黒学園はかなりのクラス数なのに、二週間も経たない内に皆が知っている―――信じられない状況だ。
誤解だと知っているはずの友人すら「何が駄目なの?」と首を傾げる好青年が相手なのだから仕方ないのかもしれない。
私としては、好青年じゃなくてもいいから、とりあえずあまり目立たない人が良かったと言うのが本音。
それを本人に伝えたところ、彼は笑顔でこう言った。
「気にしなければいいよ!それに、その内慣れるさ」
駄目だ、伝わらない。
その脱力感は、同じくそれを痛感している花梨にだけわかってもらえた。
いつまでもいつまでも流されているわけにはいかない。
この辺りで白黒はっきりさせておかなければ!彼を待つ放課後、誰もいない教室の中でひとり、そう決心した。
時計を見上げ、そろそろ時間だと気付くと、慌てて荷物をまとめ、教室の鍵を閉めて職員室へと向かう。
教室の鍵を返し、昇降口で靴を履きかえて練習場へと足を運んだ。
彼が話し出したらこちらが話をする機会がなくなる。
とにかく、第一声が大事だ。
「待たせたね!」
ぶつぶつと悩んでいた所に、背中からの声。
考えていたことが全て彼方へと飛んだ。
「だ、大丈夫。お疲れ様、猛」
第一声が大事、なんて言っていた割に、零れ落ちたのはいつも繰り返していた返事。
振り向いた先に、眩しい笑顔。
あぁ、今日も駄目みたい―――そう、確信した。
「帰ろうか。用意は出来てる?」
「うん」
ごく自然に、置いていたカバンを持ち上げてくれる彼。
受け取ろうとすると、代わりとばかりに手を握られた。
すごくドキドキするし、何度繰り返しても慣れないけれど…この手のぬくもりは、嫌いじゃない。
何だかんだと言いながら、このまま流されるままに進む自分の未来が予想できてしまった。
大和 猛 / ガーベラ