007.どうせ嘘なら

「筆頭」

小さな小さな声が聞こえ、傍らの政宗様が静かに動き出す。
逃げるぬくもりを追うように伸ばしかけた手で、出来るだけ自然に見えるように夜着を引き寄せた。
それに気付いた政宗様の手がそれを私の方へと掛け、サラリと髪を撫でてから離れていく。
足音も気配もなく、彼は夜の中へと消えた。

政宗様が戻ってきたのは、それからいくらも経たない内だったと思う。
眠気の所為で時間の感覚が曖昧だから、もしかするとそれなりに時間が経っていたかもしれない。

「…何か、ありましたか?」

氷景がこんな時間に声をかけてきたのだから、何かあったに決まっている。
それなのに、あえてそう問いかけてしまったのは何故だろう。
起こしたか、と呟きが聞こえ、あたたかい手が前髪を撫でていく。

「………何もない。気にせず寝ていろ」

何もないはずがない。
けれど、関わらせようとしないのは、一時的とは言え、私が戦線を離脱しているからだろう。
もしかすると、関わらせまいと言う政宗様の気遣いは無駄に終わってしまうかもしれない。
私がそれだけ、他国にも広く知れてしまっているし、伊達軍の多くを担っているから。
けれど―――今だけはその嘘に流されておこう。

「…無茶だけは、なさらないでくださいね」

夢へと足を運びながら、彼を見上げてそう囁く。
政宗様は静かに口角を持ち上げ、ああ、と答えてくれた。
促されるままに瞼を閉じてしまえば、感じるのは彼の優しい手の平の感覚だけ。
優しい嘘に包まれて、静かな世界へと、落ちる。

伊達 政宗 / 廻れ、

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11.09.22