001.着信ナンバー

ピリリリリ、と携帯が音を立てた。
今まさにミーティングが終わったばかりの室内に、その音が響く。
音に覚えのある人間が反応し、自身の携帯を取り出しては、自分ではないと悟る。
そうして、自分の携帯を確認してから音源を探すと、同じくそれを取り出していた彼女へと行き着いた。
音に合わせて点滅するランプ。
彼女は携帯を開くまでもなく、サブディスプレイに表示された文字の羅列だけを見て、その着信を強制的に終了した。

「…出なくていいの?」

彼女の隣にいた鈴音が控えめに問いかける。

「うん。部活中は知らないナンバーには出ない事にしてるから」

正式に言えば部活に所属していない彼女だが、助っ人を熟すだけの事はあり、そのあたりの考えはしっかりしている。
声に出さないが、その場にいたメンバーが、へぇ、と感心した。
淀みなくキーを叩いていた蛭魔の指先が止まったから、彼もまた、同じ心境だったのかもしれない。

―――ピリリリリ。

今まさにカバンに片付けようとしていた彼女の携帯が、再び着信する。
誰もが諦めの悪い相手だな、とそれを見た。
今回もやはり無視するのだろうと思いきや―――サブディスプレイを一瞥した彼女は、迷いなく携帯を持ち上げ、ガタンと席を立つ。

「妖一先輩、ちょっと抜けます!」

引き止める言葉を発する暇すらない。
まさに駿足で部室を飛び出していった彼女に、室内がどす黒い沈黙に包まれる。
原因は、さきほど彼女を感心した気持ちは一体どこへ?と問いたくなるような、不穏な空気を背負った一人。

「と、とりあえず…練習に行ってきまーす…」

誰からともなく、引き潮のように部室から逃げ出した。




「どうしたの、練習中に珍しいね」
『今日、父さんが緊急の会議でそっちに行ってるから、帰りに迎えに行くって』
「そうなの?乗せてもらっていいのかな」
『どの道、同じ方向に走るんだから問題ない。言い出したのは父さんの方だし』
「ん。じゃあ、準備はできてるから、待ってる。今日会える?」
『起きて待ってる』
「ありがと!楽しみにしてる。じゃあ、また後でね」

本庄 鷹 / チューリップ

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11.09.13