100.小さな約束をしませんか、君が帰ってくるように

「あなたは時々、まるで存在していなかったみたいに消えてしまうわね」

彼女から向けられた不満に、藍染は口元を持ち上げた。
そうかな、と答えるけれど、その空気がそれを肯定している。

「私は必ず帰ってくるよ」
「…そう、だと願っているわ」

どうか、置いて行かないでほしいと思うから。
淡白に答えた言葉に、切実な想いを込める。
彼に届いてほしい、でも、届いてほしくない。
矛盾した感情に、胸の奥が焼き切れてしまいそうだ。

「君は口約束では納得しそうにないね」
「…面倒でしょう?」
「いや?その程度を面倒だとは思わないよ。そうだな…」

少し思案した彼は、懐から何かを取り出し、彼女の手を取った。
コロン、と手の平に転がされたそれは、小さな種。

「庭の片隅にでも植えるといい。それが花をつける時には、必ず傍にいると誓おう」
「誓うだなんて…変な感じね」
「不満かい?」
「…いいえ」

手渡されたそれをぎゅっと握りしめる。
今日は雨が降っているから、明日にでもこの種を植えよう。
何年かかるのか、何の種なのか。
何もわからないけれど、何も知らずにいつか来るその日を待つのも悪くないと思った。




「ねぇ、惣右介さん。私、本当は知っていたのよ。あの種には…あなたの霊力が込められていたんだって」

何百年と言う月日が流れ、種は大樹へと成長を遂げた。
けれど、いつの間にかつけていた蕾が開く様子はない。
何かに押し留められているかのように、あと一歩の所で時を止めている。

「あなたがいないと、この花は咲かないんでしょう?」

全てを知った上で、その約束を受け入れた。
彼女はただひたすら、花が咲くその日を待ち続けるのだろう。

藍染 惣右介 / 逃げ水

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11.09.12