097.永遠に擦れ違う、君と僕は違うから

「…平行線だね」
「…ええ、同感」

睨み合うように見つめ合っていた視線が外れ、そっと肩の力を抜く。
緊張してしまうのも無理はない―――シャルが本気になったら、私なんて指先ひとつで死んでしまうだろうから。
呆れたように溜め息を吐き、ソファーに沈む彼。
きっと、彼には私の言い分は理解できないのだろう。

「君だって同じことをしてる。それなのに、納得できないなんて…子どもみたいだよ」
「同じ…?」
「ルビーは殺し屋だろ?」
「………」

否定も、肯定もしない。
彼にはまだ、真実を教えていないから。
ゾルディックほどではないにせよ、少し調べれば名前が挙がる程度に有名な殺し屋、ルビー。
それは私の三つ目の顔であり、仕事でもある。
シャルが知るのは、きっとそこまでだ。

「でも、駄目。殺しは…仕方ないって片付けちゃ…駄目」
「言ってる事、矛盾してるってわかってる?」
「偽善だろうとなんだろうと、駄目なものは駄目なのよ」

殺人は罪―――死ぬ前、生前に骨の髄まで刻まれている、真理。
この世界に来て、それが身近になってしまった今でも、やっぱりそれは私にとっては真理なのだ。
仕方ないから殺す、そんな彼の言い分は、私には理解できないし、したくない。

「ルビーはよくて、俺は駄目な理由を聞かせてくれるなら、納得できるかも」
「………言えない」

今はまだ。
いずれ、彼には語る時が来るだろう。
もしくは、彼自身が真実に辿り着くかもしれない。

「納得できない、それが気持ち悪くて嫌なら、いつでも―――」

別れるから、と言う言葉は最後まで紡がせてもらえなかった。
指先が唇の上に乗り、その動きを制する。

「納得できる事が全てじゃないよ。俺たちは別の人間なんだから。全部分かり合う必要なんてない」

だから、手放す気もない。
言葉ではなく、彼の目がそう語る。
肉体的に囚われ、いつの間にか心を奪われていた。
気が付けば、私自身も彼に少なからず依存している。
…きっと、彼はその事に気付いていないけれど。

「じゃあ、この話はもう終わり。…それでいいでしょ?」
「そうだね。平行線の話を続けても時間が無駄だし」

そう言うと、シャルは変わらぬ笑顔を浮かべ、手を差し出す。

「久し振りにデートしようか?」

この人は、この手は―――何の躊躇いもなく命を奪う。
それについては受け入れられないと言う自覚があるのに、何故なのか…この手は、怖くない。

「…駅前のケーキが食べたいわ」
「甘いもの好きだね」
「あなたも嫌いじゃないでしょ」
「まぁね。じゃあ、いこっか」

手を重ねれば、優しく包み込まれる。
その熱に縋る様に、きゅっと指先を握りこんだ。

シャルナーク / ラッキー・ガール

Menu(お題順) Menu(ジャンル別)

11.09.02