094.この恋を花に例えてみましょうか

蕾をつけ、綻び、咲き誇る。
毎年、狂いもせずに同じ時期になると咲く花を見上げ、目を細める。
まるで、私のようだと思った。

毎年毎年、飽きる事無く花開く。
一分一秒を惜しむように、新たな一面に恋をして。
そうして過ごすうちに、小さな花が大きな大輪へと変化した。

「元々こういう感情を持っていたけれど…不思議ね。人間界で暮らすうちに、その感情が進化した気がする」

魔界では、感情と言うよりも本能が先に立つ。
そう言う世界だからこそ、感情の部分はどうしても二の次になってしまうのだ。
人間界と言う微温湯の世界は、私に感情の変化を教えた。
最高点だと思っていたこの感情に、まだ上が存在するのだと言う事を。

「不思議不思議と言いながら、とても楽しそうです」
「そうね。楽しくて仕方がないわ。これは、私が人間に化けているからなのかしら。それとも…私自身が、中に抱えていたものなのかしら。どう思う?」
「私にはわかりかねますが、言える事が一つ。昔よりも、幸せそうに見えます」

私は何も答えず、代わりに小さく微笑んだ。
プツン、と花弁を指先に千切り取り、そっと唇を寄せる。

「いつかは終わりが来る。けれど、終わりがまた次へと続いていくなら…悪くない、と思えるようになったのは、この世界のお蔭でしょうね」

手放した花弁が風に乗り、やがて地面へと舞い落ちる。
朽ちたそれは、やがて次のための養分へと成り替わるのだ。
私も彼も、いつかはそうして終わりを迎える。
その時、私たちは何を残せているのだろうか―――

悠久に馳せる想い

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11.08.29