092.ひとつひとつ、散りばめて

ペタリ、と付箋を貼る。
柔らかい色合いの付箋の上には、今日の日付が書かれていた。
それを満足気に見つめる彼女。
よし、と頷いた彼女の前にあるのは、大きな地図。
彼女の身丈と同じくらいの大きさの地図は、国全体を表示させる縮尺だ。

「随分回ったね」

まだ余っている未使用の付箋をペラペラと指先で遊ばせながら、そう呟いた。
そんな彼女の背中側から腹へと伸びてきた腕。
二本の腕に包み込まれ、抵抗する事無くその胸へと凭れかかると、彼女の肩に顎がのった。

「そうだね。東の方がちょっと少な目?」
「うん。まだ二ヶ所しか貼ってない」
「来月はそっちだね」
「じゃあ、サグラダ・ファミリアを観に行きたい!」
「好きだね、建築」
「建築好きじゃなくたってあれは惹かれるって」

やや興奮気味にそう言えば、はいはいと少しばかり気のない返事。
でも、それが形だけのものだと言う事は、長い付き合いからわかっている。
腹の上に絡んだ手にそっと自身の手を重ね、来月の旅へと思いを馳せる。

いつから、どちらから。
切欠は忘れてしまったけれど、二人が休みを利用して旅に出るようになって、それなりに経った。
毎回の休みを利用するわけではないから、期間はまちまちだ。
けれど、確実に増えていく付箋は、二人の思い出の軌跡。
楽しげに目を細める彼女と、彼と。

「今度はばれないようにね」
「う…ガンバリマス」
「ったく…誤魔化すの、下手なんだからさ」
「仕方ないじゃない。翼のチームメイトが強引なの!」
「はいはい。俺も適当にしとくからさ。また三回も予定を潰されるの、ごめんだし」
「…だね」

椎名 翼 / 夢追いのガーネット

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11.08.25