078.繋ぎとめる術を私は知らない
強固な鎖があればよかったのだろうか。
それとも、千切れても千切れてもなくならないほどの、無限の鎖を用意すればよかったのだろうか。
考えても無駄だと知っているけれど、考えずにはいられない。
「…ごめん」
「謝らないで。翼が悪いんじゃない、そうでしょう?」
彼は悪くないのだ、何を謝る必要があるのだろうか。
そうは言っても、きっと私の表情は全く冴えず、どんな言葉も強がりに聞こえるだろう。
現に、そうなのだから仕方がない。
開いていく距離を縮める事なんて、誰にもできないし―――してはいけないのだから。
「この距離に…慣れるしか、ないのね」
呟く声には覇気がなく、翼が表情を歪めた。
謝るなと言われたから、ごめんとは言えない。
けれど、顔色悪く座る彼女を見ていると、その言葉しか浮かんでこなかった。
「って言うか、あんなに苦手だとは思わなかったんだけど」
『あー…あいつは本当に嫌いだからな』
「顔色が悪いなんてレベルじゃなくて、紙みたいになるんだよ。なんか、心底謝りたいって思った。どうしようもないけどさ」
『仕方ない。アイツの飛行機嫌いは筋金入りだからな。あの浮遊感が大嫌いだって離陸前に寝ちまうんだ。起きてると、不機嫌になって物も言わないんだが…今回はお前がいたからな』
「俺が何?」
『お前なら、飛行機嫌いを克服させられるかもなって話だ』
椎名 翼 / 夢追いのガーネット