065.瞼に焼きついた君の笑顔、それだけを胸に

広い庭は、いつだって草花に囲まれていた。
もちろん、乱雑自由に生えているわけではなく、美しく整えられたそこ。
一部はお抱えの庭師が剪定しているのだが、その中には彼女が手をかけて大切にしている一角がある。
そこは、庭師が絶対に手を出さない彼女だけの場所。

パチン、と鋏を鳴らし、花を切る。
腕の束の上へと載せ、その量を確かめるように抱え直す。

「もうこれくらいで十分でしょうか?」

どう思います?と後ろにいるディーノに意見を求めた。
すぐそこにあるガーデンテーブルのところで紅茶を飲んでいた彼が顔を上げる。

「そうだな…玄関と部屋の分だろ?それで十分じゃねーか?」
「じゃあ、今日はこれくらいにしておきますね」

鋏と花束をメイドに預け、ディーノの向かい側に腰を下ろす彼女。
今年はどの花が綺麗に咲いただとか、もうすぐあの花の時期だとか。
嬉しそうに語る彼女を、穏やかに見つめるディーノ。
その目はただ、愛しいと語っている。

「お前は昔から花が好きだよな」
「はい!ディーノくんと出会った時も、花の季節でしたよね」

懐かしいです、と呟く彼女に導かれるように、過去の記憶がよみがえる。
今よりもずっと幼い彼女が、小さな手で一輪の花を握り、差し出してくれた。
あの時の笑顔は、ずっと忘れていない。
あの時の約束と共に。

「なぁ」
「はい?」
「花に囲まれて…幸せか?」

唐突な質問に、彼女はきょとんとした表情を見せる。
それから、ふわりと花開くように微笑んだ。

「幸せですよ、ディーノ。これ以上ないくらいに」




―――じゃあ、花で囲まれた家で幸せにしてやるよ!約束だからな!

ディーノ / お姉さんシリーズ

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11.07.13